生命創成探究センター(ExCELLS)、名古屋大学(名大)、東京工業大学(東工大)の3者は7月19日、細胞同士をつなぐ細胞間接着タンパク質である「カドヘリン」の結合過程を、ナノメートルスケールでリアルタイムに可視化することに成功したことを発表した。

同成果は、ExCELLSの西口茂孝特任研究員、名大 理学研究科の内橋貴之教授(ExCELLS兼任)、東工大 生命理工学院 生命理工学系の古田忠臣助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に7月18日週に掲載されるという。

人体は、細胞同士をつなぐ細胞間接着タンパク質の働きによって形作られ、維持されている。中でもカドへリンは形態の形成や維持に必須であり、同タンパク質を介した細胞間接着の異常が、がんの浸潤などの疾患に関与することが知られている。

カドヘリンは細胞の表面に露出しており、相手側の細胞のカドヘリンと結合して「二量体(ダイマー)」を形成することで、細胞同士を接着する。先行研究により、カドヘリンは中間体構造「Xダイマー」を経て、安定構造「ストランドスワップダイマー」を形成し、細胞同士を接着することが提案されていたが、実際のダイマー形成過程を直接観察した例はこれまでなかったという。また、そうしたダイマー構造以外の結合様式も提案されているものの、カドヘリンの結合メカニズムは明らかになっていなかったという。

そこで研究チームは今回、カドヘリンを哺乳動物の培養細胞に産生させて精製し、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、実際の細胞環境に近い条件の溶液中で観察を実施。その結果、カドヘリンは主に「S形状」、「cross形状」、「W形状」の3つの異なる形状のダイマーとして存在していることが判明したという。