宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、空気吸い込みエンジン(スクラムジェットエンジン)研究の一環として、観測ロケット「S-520-RD1」による超音速燃焼飛行試験の実施を発表した。実験場所は鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で、2022年7月23日午前5時~5時30分の実施が予定されている。
空気吸い込みエンジンとは、大気中の酸素と搭載した燃料を燃焼させて動力とするもので、燃焼用酸素の搭載を必要とするロケットエンジンに比べ多くの貨物を搭載できることから、将来の宇宙往還機や大陸間高速輸送機への適用が期待されている。そしてJAXAでは現在、極超音速(音速の5~6倍の速度)でも使用可能な空気吸い込みエンジンの研究を実施しているとのことだ。
空気吸い込みエンジンの研究における地上の風洞試験では、複雑な流路により生じる気流の乱れの違いや、気流加温に伴う異ガスの混入により、実飛行との間で空力加熱やエンジンの特性に差異が生じるという。
そのためJAXAは、地上での風洞試験結果を補正して実飛行状態における特性を予測する解析ツールの構築を目標としているとのことだ。またその解析ツールによって、空気吸い込みエンジンを搭載する将来の飛翔体実現に必要な飛行試験回数を削減でき、開発コストの低減につながるとしている。
今回実験を行うS-520-RD1号機は、観測ロケットS-520の1段部分と飛行試験用の供試体で構成され、全長は約9.15m、直径は約0.52m、全備質量は約2.6トンだという。
また同機に搭載される飛行試験用の供試体は長さ約1.8m、直径約0.52m、質量は約300kgで、先端部分から供試体内部の空気吸い込みエンジン内に空気を取り込むとともに、点火用の水素と燃料のエチレンをエンジン内に噴射して燃焼させる計画とのことだ。
飛行試験の内容として、観測ロケットS-520の1段モータによって供試体を打ち上げ、モータから分離したのちにラムライン制御部を用いて姿勢を変更し、供試体前方を進行方向として降下する際に極超音速に達したタイミングで、エンジン内部に生じる空力過熱とエンジン内部の超音速燃焼に関するデータの取得を行う予定だという。また取得したデータは電波によって地上局へ送信する計画だとしている。
今回の飛行試験は、実飛行での燃焼データなどを取得することで解析ツールの評価を行うことが目的とのことだ。