研究の結果、MgOC150がベロ毒素と3型分泌タンパク質を強く吸着することが判明したほか、O157の培養液にMgOC150を添加すると、ベロ毒素と3型分泌タンパク質が吸着され、無毒化することにも成功したという。

  • 多孔質炭素を利用したO157の無毒化

    多孔質炭素を利用したO157の無毒化 (出所:群馬大プレスリリースPDF)

また、マウスを用いたMgOC150の効果の評価・検証では、代替モデルのシトロバクター菌をマウスに経口感染させたところ、感染後4日目以降に下痢に伴う体重減少が見られ、9日目までに全頭のマウスが死亡したことが確認された一方、MgOC150を経口投与したマウスでは、感染後9日目までは体重減少が観察されず、感染後14日まで延命させることができたとする。

さらに、シトロバクター菌を感染させていないマウスにMgOC150を経口投与し3週間経過観察を行ったところ、一過的な体重減少や生育遅延、消化管の損傷などといった異常は観察されなかったほか、ヒトの大腸上皮細胞や乳酸菌や腸球菌といった善玉菌の生育にも悪影響を及ぼさなかったという。

  • 吸着除去効果

    MgOC150によるベロ毒素と3型分泌タンパク質の吸着除去効果 (出所:群馬大プレスリリースPDF)

これらの結果は、MgOC150が腸管出血性大腸菌感染症に対する重症化予防、治療効果を持つことを示唆するものであると研究チームでは説明している。

MgOC150を含む多孔質炭素は、これまでに酵素触媒の固定化や電極といった主に工業用としての用途で使用されてきた一方、多孔質炭素の医療目的での使用は一部に限られ、感染症への適用例はないという。

なお、研究チームによるとMgOC150は、O157以外にもさまざまな細菌が産生する病原性タンパク質を吸着できる可能性があるとしており、例えば赤痢菌やコレラ菌などが産生する毒素は、ベロ毒素と類似した構造を有するため、MgOC150はこれらの毒素も吸着できることが期待されるとしている。

また、近年になってさまざまな既存の抗菌薬に対して耐性を持つ薬剤耐性菌の蔓延が社会的な問題となっているが、それに対してもMgOC150が有効な可能性があるとしており、薬剤耐性菌が産生する病原性タンパク質を吸着し、無毒化することが確認できれば、薬剤耐性菌感染症に対する新たな治療オプションとして適用できる可能性があるとしている。