エクイニクス・ジャパンとNVIDIAは4月13日、日本国内で「LaunchPad」を本格的に展開すると発表した。「LaunchPad」は、エンド ・ツー ・エンドのデータサイエンスやAIワークロードのテストやプロトタイプ作成を支援する環境を提供するプログラムだ。同日、記者説明会が開催された。

「2021年はデジタルサービス基盤づくりの年になった。2022年は全てのデジタルリーダーにとって必要不可欠なパートナーになりたい」と説明会で語ったのは、エクイニクス・ジャパン(以下、エクイニクス)の代表取締役社長を務める小川久仁子氏だ。

  • エクイニクス 代表取締役社長 小川久仁子氏

同社は2021年3月、アジア太平洋地域で初となるハイパースケーラー向けのxScaleデータセンター「TY12x」を東京に開設した。10月には大阪で2つ目となるIBXデータセンター「OS3」のサービスを開始したほか、12月には西日本で初となるxScaleデータセンター「OS2x」を大阪に開設している。

着実にサービス提供基盤を盤石にしてきた2021を経て、2022年はいかにデジタルサービスをユーザー企業へ届けるのかに注力するのだという。具体的な戦略は「デジタルサービスの成長」「サステナビリティの推進」「エコシステムの強化」の3点だ。

  • エクイニクスの2022年注力領域

同社は2021年3月の「Equinix Precision Time」を皮切りに、4月に「Network Edge」を、6月に「Equinix Metal」を国内で提供開始している。さらに今後は、ユーザー企業の戦略や課題を明確化して適切なデジタルインフラの設計を支援したり、本番導入前に実際の機能や拡張性を評価するPoC(Proof of Concept)を推進したりすることで、ユーザーが利用しやすいサービス提供体制の構築を目指す。

  • デジタルサービスの成長イメージ

「サステナビリティの推進」では、温室効果ガスの50%削減を2030年までの目標値としている。なお、既に日本国内での再生可能エネルギーの使用率は100%を達成しているとのことだ。PUE(Power Usage Effectiveness:データセンターの電力使用効率を示す指標)は2019年実績の1.59に対し、2022年は5%削減した1.517を目指す。

  • サスティナビリティの推進イメージ

同社は「エコシステム」について、いわゆるチャネルパートナーではなく、同社のプラットフォーム上でサービスを展開するユーザー企業またはプラットフォーマーの関係性と捉えている。「エコシステムの強化」では、同社プラットフォーム上でさまざまな企業が相互につながりながらビジネスを展開するような世界観を目指すとのことだ。

「Platform for Platforms」と称するこの仕組みは、さまざまなIT企業がエクイニクスのプラットフォーム上で各社のプラットフォームを構築することで、より迅速なグローバル展開が可能な利点を持つという。

  • エコシステムの強化イメージ

まさにこの「Platform for Platforms」の取り組みとして、エクイニクスとNVIDIAは同日、日本国内において「NVIDIA LaunchPad プログラム」(以下、LaunchPad)を本格始動すると発表した。同プログラムは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)の開発から本格展開までの一連のワークフローを、NVIDIAのサポートを受けながら評価できるものだ。AIのみならず、データサイエンス、3Dデザインコラボレーションなどエンドツーエンドのワークフローを即座に体験可能である。

同プログラムは、「NVIDIA DGX システム」上で動作するモデルトレーニング用のAIコアインフラストラクチャと、「NVIDIA EGXプラットフォーム」上に構築された「NVIDIA-Certified Systems」による推論用のAIエッジインフラストラクチャの両方を提供するとのことだ。

  • 「NVIDIA LaunchPad プログラム」概要

同プログラムは、データサイエンスやAIの開発と運用を体験できるキュレーテッドラボにアクセス可能で、TensorFlowを使ったモデルのトレーニング、NVIDIA RAPIDSによる価格予測、Fleet Commandで展開されるコンピュータービジョンAIアプリケーションなどを実行できる。

また、同プログラムは日本や北米、ヨーロッパ、シンガポールなど9地域の地域のEquinix International Business Exchangeデータセンターで展開されている。Equinix Fabricにより世界中のエクイニクスのデータセンターと高速かつ低遅延なソフトウェア定義の仮想ネットワークで相互接続されているため、異なるロケーション間でデータやAIモデルを移動し、モデル開発後にデータセンター内の各企業のオンプレミス環境に速やかに展開して稼働を開始できる。

  • LaunchPadによるAIモデル展開イメージ

エヌビディアの日本代表 兼 米国本社副社長である大崎真孝氏は「世界中にあるエクイニクスのデータセンターを介して、当社のAI開発ツールやアプリケーションにアクセスしていただきAI開発を加速してほしい。LaunchPadで多くの企業や研究機関のAIモデル開発を十分に加速させ、さらなるイノベーションの創出を支援したい」と期待を述べていた。

「LaunchPad」の運用は既に開始しており、同社が定める条件を満たす企業や研究機関はAIワークロードの検証を無料で開始できるとのことだ。

  • エヌビディア 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝氏