世界のスーパーコンピュータ(スパコン)に関するランキング「TOP500」が11月15日(米国時間)、米国ミズーリ州セントルイスにて開催されているHPCに関する国際会議「SC21」にて発表され、1位は理化学研究所(理研)が2021年3月より共用を開始したスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」が4期連続で首位を獲得したことが明らかにされた。

また富岳は、産業利用など実際のアプリケーションでよく用いられる共役勾配法の処理速度に関するランキング「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」、人工知能(AI)の深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-AI」、大規模グラフ解析に関するランキング「Graph500」でも首位を獲得し、TOP500を含めた4部門で4期連続1位を獲得したこととなる。

  • スパコン富岳

    理研に設置されている富岳 (提供:理化学研究所)

TOP500における富岳のLINPACK性能は、前回同様のフルスペック(432筐体、158,976ノード、コア数7,630,848)での計測にて442.01PFlops(実行効率82.3%)となっている。また、HPCGのスコアは16.00PFlops、HPL-AIのスコアは2.004EFlops、Graph500のスコアは102,955GTEPSで、いずれも前回同様の値となっている。

  • A64FX

    富岳の中核をなす「A64FX」プロセサを2基搭載する基板 (編集部撮影)

2位は前回同様の米国のオークリッジ国立研究所のスパコン「Summit」で、LINPACK性能は148.6PFlopsと富岳の1/3程度となっている。3位はローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の「Sierra」でLINPACK性能は94.640PFlops、4位は中国のNational Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)の「神威・太湖之光」がLINPACK性能93.014PFlopsでそれぞれ入っており、ここまでは前回から変化はない。5位は、前回よりランクインした米国のNational Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)に設置され、NVIDIA A100を6159基搭載したスパコン「Perlmutter」。LINPACK性能を前回の64.590PFlopsから70.870PFlopsと伸ばしたものの、順位に変動はなかった。

6位はNVIDIAのスパコン「Selene」。前回のLINPACK性能64.590PFlopsよりも若干低い63.460PFLopsとなったがこちらも順位に変動はなかった。7位は中国National Super Computer Center in Guangzhouによる「Tianhe-2A」(61.445PFlops)、8位はドイツの「JUWELS Booster Module」(44.120PFlops)、9位はイタリアの半国有石油・ガス会社であるEniの産業スパコン「HPC5」(35.450PFlops)となり、若干の性能に変化があったシステムはあるものの、ここまでの順位は前回より変更はなかった。

唯一、順位に変更があったのは10位の米国Microsoft AzureのAzure East US 2のシステム「VOYAGER-EUS2」。AMD EPYC 7V12(48コア、2.45GHz)とNVIDIA A100の組み合わせでLINPACK性能30.050PFlopsを獲得した。前回10位であった米テキサス大学オースティン校のTexas Advanced Computing Center(TACC)の「Frontera」(23.516PFlops)は、前回の性能と同様で、順位は13位へと後退。これでトップ10システムは最低でも30PFlops以上の性能を有することとなった。

  • TOP500

    2021年11月版(第58回)TOP500の上位10システムの概要 (出所:TOP500 Webサイト)

また、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100以内にランクインしているのは以下の通り。前回は富岳併せて18システムがランクインしたが、今回は富岳含め14システムのランクインと数を減らす結果となった。

  • 16位(前回12位):日本の産業技術総合研究所(産総研)の「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」(22.208PFlops)
  • 17位(同13位):東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.121PFlops)
  • 31位(同25位):宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスーパーコンピュータシステム(JSS3)のHPCシステム「TOKI-SORA」(16.592PFlops)
  • 39位(同32位):東京大学(東大)-筑波大学の共同運用スパコンで、東大の柏キャンパスの最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC:Joint Center for Advanced High Performance Computing)に設置されている「Oakforest-PACS」(13.555PFlops)
  • 48位(同40位):海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「地球シミュレータ(SX-Aurora TSUBASA)」(9.990PFlops)
  • 59位(同51位):東京工業大学の「TSUBAME3.0」(8.125PFlops)。
  • 63位(同55位):核融合科学研究所の「プラズマシミュレータ・雷神」(7.892PFlops)
  • 73位(同63位):名古屋大学の「Flow」(6.618PFlops)
  • 78位(同67位):日本原子力研究開発機構(JAEA)と量子科学技術研究開発機構(QST)の共用スパコン(6.162PFlops)
  • 79位(同68位):大阪大学のクラウド連動型高性能計算(HPC)・高性能データ分析(HPDA)用スパコン「SQUID(Supercomputer for Quest to Unsolved Interdisciplinary Datascience)」のCPUノード(6.105PFlops)
  • 86位および87位(同75位および76位):気象庁のスパコン(5.730PFlops)
  • 98位(同86位):名古屋大学情報基盤センターのスーパーコンピュータ「Flow」のType II サブシステム(4.880PFlops)

2021年11月19日訂正:記事初出時、「核融合科学研究所」と本来表記すべきところを、誤って「核融合研究所」と表記しておりましたので、当該箇所を修正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。