オンライン開催となった「International Supercomputing Conference 2020(ISC2020:国際スーパーコンピュータ会議)」において6月22日(独時間)、スーパーコンピュータ(スパコン)の処理性能ランキングである「TOP500」の2020年6月版が発表された。

55回目となる今回のランキングでは、理化学研究所(理研)が開発主体として開発・整備を進めているスパコン「富岳」がLINPACK性能415.53PFlops(消費電力28.3MW)でトップを取得。また、富岳はTOP500のみならず、「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」、「HPL-AI」、「Graph500」の4部門において1位を獲得し、4冠を達成した。日本のスパコンがTOP500で1位を獲得するのは2011年11月の「京」が獲得して以来、9年ぶりとなる。

  • 富岳

    理研に設置された「富岳」 (提供:理研)

2位は米国オークリッジ国立研究所(ORNL)に設置され、2018年6月より稼動を開始し、4期連続でTOP500の1位を獲得していたIBM製AIスーパーコンピュータ(スパコン)「Summit」がLINPACK性能148.600PFlops(消費電力10.1MW)ランクイン。3位にはローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の「Sierra」で、こちらも前回同様の94.640PFlops(7.4MW)。4位には2016年6月版から2017年11月版までの4期連続1位の中国National Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)が開発し、National Supercomputing Center(Wuxi)に設置されているスパコン「Sunway TaihuLight(神威・太湖之光)」がLINPACKベンチマーク93.014PFlops/s(消費電力15.3MW)が、5位も同じく中国National Super Computer Center in Guangzhouによる「Tianhe-2A」で、LINPACKのベンチマーク61.445PFlops(消費電力18.5MW)がそれぞれランクイン。

6位にはイタリアの半国有石油・ガス会社であるEniの産業スパコン「HPC5」が35.450PFlops(消費電力22.5MW)が、7位にはNVIDIAのスパコン「Selene」が27.580PFlops(消費電力13.4MW)がそれぞれ初めてランクイン。8位は米テキサス大学オースティン校のTexas Advanced Computing Center(TACC)が開発・構築を行い、同センターに設置され、2019年より稼動を開始した「Frontera」が23.516PFlopsで、9位にはイタリアCINECAの「Marconi-100」が21.640PFlops(消費電力14.8MW)で、10にはスイスSwiss National Supercomputing Centre(CSCS)の「Piz Daint」(21.230PFlops、2.4MW)がそれぞれランクインしており、上位10システムの内、4システムが初ランクインとなった。

また、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとしては、12位に日本の産業技術総合研究所(産総研)の「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」が19.880PFlops(1.6MW)が(前回8位)、19位に東京大学(東大)-筑波大学の共同運用スパコンで、東大の柏キャンパスの最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC:Joint Center for Advanced High Performance Computing)に設置されている「Oakforest-PACS」(13.555PFlops/2.7MW。前回16位)、28位に東京工業大学の「TSUBAME3.0」(8.125PFlops/0.8MW。前回25位)、37位に名古屋大学の「Flow」(6.618PFlops)、42位および43位に気象庁のスパコン(5.730PFlops/1.4MW。前回32位および33位)、54位に九州大学のスパコンシステム「ITO」(4.541PFlops。前回41位)。60位に東京大学の「Oakbridge-CX」(4.290PFlops/0.8MW。前回45位)。61位に匿名の研究機関のスパコン(4.128PFlops。前回46位)。68位にさくらインターネットのスパコン(3.712PFlops。前回54位)。84位に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「SORA-MA」(3.157PFlops/1.7MW。前回66位)。88位に物質・材料研究機構(NIMS)の「Numerical Materials Simulator」(3.082PFlops/0.7MW)。90位に京都大学の「Camphor 2」(3.057PFlops/0.8MW。前回70位)が、それぞれ100位以内に入っている。

  • TOP500

    2020年6月版TOP500の上位10システムの概要