理化学研究所(理研)が2021年3月より共用を開始したスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」が、世界のスーパーコンピュータ(スパコン)に関するランキング「TOP500」において、3期連続で世界1位を獲得した。
昨年に続きオンラインで開催されているHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)に関する国際会議「ISC2021」にて第57回TOP500の結果として発表された。また富岳は、産業利用など実際のアプリケーションでよく用いられる共役勾配法の処理速度に関するランキング「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」、人工知能(AI)の深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-AI」、大規模グラフ解析に関するランキング「Graph500」といったTOP500と関連するランキングでも3期連続で1位を獲得したことも併せて発表されている。
TOP500における富岳のLINPACK性能は、前回同様のフルスペック(432筐体、158,976ノード、コア数7,630,848)での計測にて442.01PFlops(実行効率82.3%)となっている。
TOP500の2位は前回同様の米国のオークリッジ国立研究所のスパコン「Summit」で、LINPACK性能は148.6PFlopsと富岳の1/3程度となっている。3位はローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の「Sierra」でLINPACK性能は94.640PFlops、4位は中国のNational Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)の「神威・太湖之光」がLINPACK性能93.014PFlopsでそれぞれ入っており、ここまでは前回から変化はない。
5位には米国のNational Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)に設置され、NVIDIA A100を6159基搭載したスパコン「Perlmutter」が新顔としてランクイン。LINPACK性能は64,590PFlopsとしている。
Perlmutterが5位に入ったため前回5位だったNVIDIAのスパコン「Selene」が若干の性能向上となる64,590PFlops(前回は61,444.5PFlops)を果たしながらも6位に後退。それに伴い、前回6位だった中国National Super Computer Center in Guangzhouによる「Tianhe-2A」(61.445PFlops)が7位に、同7位だったドイツの「JUWELS Booster Module」(44.120PFlops)が8位に、同8位だったイタリアの半国有石油・ガス会社であるEniの産業スパコン「HPC5」(35.450PFlops)が9位に、そして同9位だった米テキサス大学オースティン校のTexas Advanced Computing Center(TACC)の「Frontera」(23.516PFlops)が10位へとそれぞれ順位を1つずつ落とす結果となった。
また、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100以内にランクインしているのは以下の通り。
- 12位:日本の産業技術総合研究所(産総研)の「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」(22.208PFlops)
- 13位:東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.121PFlops)
- 25位:宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスーパーコンピュータシステム(JSS3)のHPCシステム「TOKI-SORA」(16.592PFlops)
- 32位:東京大学(東大)-筑波大学の共同運用スパコンで、東大の柏キャンパスの最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC:Joint Center for Advanced High Performance Computing)に設置されている「Oakforest-PACS」(13.555PFlops)
- 40位:海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「地球シミュレータ(SX-Aurora TSUBASA)」(9.990PFlops)
- 51位:東京工業大学の「TSUBAME3.0」(8.125PFlops)
- 55位:核融合科学研究所の「プラズマシミュレータ・雷神」(7.892PFlops)
- 63位:名古屋大学の「Flow」(6.618PFlops)
- 67位:日本原子力研究開発機構(JAEA)と量子科学技術研究開発機構(QST)の共用スパコン(6.162PFlops)
- 68位:大阪大学が2021年5月より稼働させたクラウド連動型高性能計算(HPC:High Performance Computing)・高性能データ分析(HPDA:High Performance Data Analysis)用スパコン「SQUID(Supercomputer for Quest to Unsolved Interdisciplinary Datascience)」(6.105PFlops)
- 75位および76位:気象庁のスパコン(5.730PFlops)
- 86位:名古屋大学情報基盤センターのスーパーコンピュータ「不老」のType II サブシステム(4.880PFlops)
- 91位:九州大学のスパコンシステム「ITO」のサブシステムA(4.541PFlops)
- 94位:東京大学情報基盤センターの「Wisteria/BDEC-01」のデータ・学習ノード群(Aquarius)(4.425PFlops)
- 98位:東京大学の「Oakbridge-CX」(4.290PFlops)
- 100位:匿名の研究機関のスパコン(4.128PFlops)