豊田中央研究所(豊田中研)は4月21日、太陽光のエネルギーを利用し、二酸化炭素(CO2)と水のみから有用な物質を合成する「人工光合成」を、実用太陽電池サイズの36cm角のセルで実現し、変換効率7.2%を実現したと発表した。詳細は、エネルギー関連の国際学術誌「Joule」に掲載された。
人工光合成は、太陽光エネルギーを利用し、CO2と水のみから有用な物質を合成し、化学エネルギーとして貯蔵する技術だ。同社の場合は、半導体と分子触媒が用いられており、CO2の還元反応と水の酸化反応を行う電極を組み合わせ、常温常圧で有機物(ギ酸)の合成を行う。
同社が2011年に原理実証を行った際の太陽光変換効率は0.04%であったが、その後、2015年には1cm角サイズで、光合成の手本となる植物をも上回る4.6%を達成(当時の世界最高記録)している(植物の変換効率は1%前後といわれている)。
太陽電池セルと同様、人工光合成セルも基板サイズが大きくなれば変換効率が低下するという課題があり、人工光合成セルを高い変換効率を維持したまま実用サイズに拡張することは技術的に困難とされてきた。
そこで今回の研究では、基本原理はそのままに、太陽光にて生成した多量の電子を余すことなくギ酸合成に使用する、新しいセル構造と電極を開発したという。今回開発された人工光合成セルの特徴は、太陽電池で生成した電子量とのバランスがよいサイズに電極面積を拡張すると同時に、ギ酸合成に必要な電子、水素イオン、CO2を電極全面に素早く途切れることなく供給し、ギ酸合成を促進するという点だという。
これにより、36cm角の実用サイズにおいて、同サイズにおいて世界最高クラスの変換効率となる7.2%を実現したとする。また、今回開発されたセル構造は、より大きなサイズにも適用できるとしており、研究チームでは、将来的に工場などから排出されるCO2を回収し、この人工光合成にて再び資源化するシステムの実現を目指すとしている。