米Cerebras Systemsは8月7日付で、日本での事業展開を本格展開することを決定し、日本支社となる「セレブラス・システムズ合同会社」を東京に設立したことを発表した。

これまで同社は日本市場向けに2016年より東京エレクトロン デバイス(TED)をパートナーとして事業を行ってきた。今回、日本支社を設立したことで、より日本市場に向けたソリューションの提供が提供しやすくなると同社では説明している。ただし、販売そのものは代理店(2020年8月時点ではTEDのみだが、今後は拡充していきたいとしている)を経由する形に変更はないとしている。

同社の最大の特長はウェハスケールプロセッサである「Cerebras Wafer Scale Engine(WSE)」を開発、搭載したAIコンピュータ「Cerebras CS-1」を提供していることである。2019年より日本でも提供が開始されており、2020年8月時点で複数顧客とTEDならびに米Cerebrasとの間でPoCが進められているという。これが、今後は米Cerebrasではなく、日本支社を介することが可能となるため、より早いやり取りが可能になるという。

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    Wafer Scale Engine(WSE)のチップ (編集部撮影)

また、TEDも2020年秋にデモ・検証センター「TED AI Lab」を都内に開設する予定としており、製品デモの提供や、データPoC用有償利用サービスの提供を行っていく計画としており、国内でもCS-1活用の活性化を図っていきたいとしている。

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    TEDが2020年秋にオープンする予定のCS-1を実際に活用できるデモ・検証センター「TED AI Lab」の概要

セレブラス・システムズの代表執行役社長に就任した江尾浩昌氏は、「日本支社の主な活動ミッションとして、『国内顧客に対する支援強化』『国内販売体制の強化』『優秀な人材の確保』『業界団体、研究機関との連携』『国内要求事項への米国本社へのフィードバック』『日本市場に長く根付くビジネス基盤の構築』の6つを掲げており、2020年度はスタートアップフェーズとしてすでにPoCを進めている顧客への支援と新規市場の開発準備を中心に、業界団体への参加も含め、日本での存在感を増していきたい」としており、2021年度より本格的な先行顧客に対する本格的な導入促進やマーケティング活動の強化、研究開発期間などとの連携によるリファレンス発表などを行っていきたいとしている。

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  • セレブラス・システムズ合同会社の主な活動ミッションと、各年度の取り組みについてのロードマップ

また江尾氏は「ディープラーニングは実際のプロセス総合処理時間を早くすることが重要だが、多くの研究現場は、大型データセンター並みの予算やスペースがあるわけではなく、簡単にGPUを増やす、といったことができない。仮にできたとしても、GPUクラスタは増強するごとにベストプラクティスでのチューニングをしなおす必要があり、本当にしたい研究部分の時間がそがれるといった課題があった。CS-1はこうした課題を解決できるAIスーパーコンピュータであり、複雑なクラスタ構築も不要であるため、物理的な設置やチューニングなどといった時間を削減することができるというメリットがあり、より多くの人にAIの恩恵を提供することが期待できるようになる」ともしており、TEDと協力して、日本におけるAI活用の進展を図っていきたいとしている。