全固体電池技術開発ベンチャーの英Ilikaは、医療向けインプラントやウェアラブル端末などでの活用を想定した小型かつ薄型の全固体電池技術「Stereax M50」を開発したことを発表した。

  • Stereax M50
  • Stereax M50
  • Stereax M50と、説明を行ったIlikaの創設者でCSO(最高科学責任者)を務めるBrian Hayden氏。氏は英サウサンプトン大学の物理化学の教授で、科学誌「Surface Science」の国際編集委員会のメンバーでもある

同社は全固体電池技術を電子部品メーカーなどに提供するIPベンダ。技術の根源となる薄膜プロセスは、半導体の製造プロセスと同様の高真空環境下での蒸着やスパッタリングを用いることで、電極ならびに固体電解質を形成する(正極=カソードはコバルト酸リチウム系、負極=アノードはa-Si、そして電解質は酸化物系をそれぞれ用いて形成しているという)。ウェハとしては6インチのものを用いているが、技術そのものはガラス基板でも対応できるため、太陽電池と一体形成しよう、というアイデアもパートナーとの間ではでているという。

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    Stereax M50の構成イメージ

また、低リークであるため、エナジーハーベストによって発電された微弱な電気を充電することも可能であり、そうした発電装置と組み合わせて活用する、といったことも考えられているという。

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    Stereax M50の特性

Stereax M50は、医療向けに開発された固体薄膜電池であり、-20℃~+100℃の温度範囲で動作し、サイズは10.75mm×3.75mm×0.6mmと小型かつ薄型だが、サイズについてはカスタマイズが可能だという。また、容量は50μAhで、電解層が薄いため、充電時間が短くて済み、10分未満で80%まで充電することが可能という特徴を有しているほか、生態適合性のあるパッケージングを採用しているため、インプラントとして体内に埋め込んでも人体への影響を最低限に抑えることが可能だという。

  • Stereax M50

    Stereax M50の適用イメージ

なお、同社は医療分野向け以外にも、産業分野や再生可能エネルギー分野、自動車分野に向けた全固体電池技術の開発を進めており、それぞれの分野でパートナーと連携し、産業適用を進めていきたいとしている。

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    Ilikaの全固体薄膜電池のロードマップ