情報関連機器をはじめとする、各種業務機器のリースや割賦販売と、各種ファイナンス業務等を手がける昭和リースでは、RPAに早い段階から出会っていたという。

「2008年から2010年頃には、すでにBizRobo!を知っていました。しかし、当時はバックオフィス業務の集中に注力するのが先だと考え、導入にはまだ早いと見送ったのです。そしてバックオフィス業務を担当する業務サポート部がしっかりと定着した頃、RPAが世間でも注目されてきたということで再検討を行いました」と語るのは、昭和リース 営業サポート部門 オペレーション企画管理部 部長の藤本裕哉氏だ。

  • 昭和リース 営業サポート部門 オペレーション企画管理部 部長の藤本裕哉氏

2016年後半に再検討を開始した後、導入したのは「Blue Prism」だ。

試験導入当初はインタフェースが英語表記であることなどからスムーズな利用は難しく感じられたというが、それでも3カ月程度でメインフレームの画面もきちんと読み込んだ形でのロボットを作成、稼働させることができた。

「2017年6月にはBlue Prismの正式導入を決めていたのですが、当時は並行して営業システムの大幅改変がありました。そのため停滞期間があり、実際に本格的な開発にとりかかれたのが11月、本格稼働に至ったのは2018年1月でした」と藤本氏は語る。

業務フローやシステムを熟知したスタッフがRPAを担当

RPA導入にあたっては、いくつかの課題があったという。まず、営業システムの大幅改変が同時期に行われていた都合上、IT部門はそちらに注力していた。そのため、RPA化については藤本氏の所属する営業サポート部門が担当することになった。現在は社内3名常駐エンジニア3名の6名(いずれも兼任)の中で、3人がトラブル発生時の対応などにもあたっているが、将来的には専任1名+サポート2名(兼務)程度の体制で運用したいという。

「我々はIT関連にかぎらず、業務システムについて対応する部門です。普段の業務のやり方を変化させる場合や、新しくなった業務フローについてのサポートなども行います。業務フローについてはよく知っていますが、開発については詳しくありませんでした」と藤本氏。そのため、実際の開発にかかる前にはRPAテクノロジーズが実施する2日分の研修に全員が参加したという。

「ツールの使い方自体は教えてもらえましたし、Blue Prismは動作録画式ではなくフローチャートを書き込むタイプなので、業務フローのプロセスを反映させる形で開発を進めることができました。しかし実際にやってみると、やりたいことを実現するにはどうしたらいいのかと戸惑うことも多くあり、サポートにかなり頼りました」と藤本氏は苦労を語る。

  • Blue PrismのObject Studioで開発された昭和リースの業務プロセス例

また、ツール上で作業する前の下準備の必要も指摘された。これはロボットが取得するデータが、人間にとっては使いやすい、もしくは問題なく対応できる程度のものであっても、ロボットにとっては使いづらいという場合もあるからだ。

「主にExcelのデータなのですが、ファイル名やシート数についての扱いもロボットと人では違っています。実際は人が入力する画面はそのままに、できあがったデータをロボットに引き渡せる形へと変換するマクロを作成しました」と藤本氏。

業務システムと連携するためのIDについて、検討中だという。元々は部署ごとに基本的に利用できるシステムや情報の権限が割り振られているため、IDも部署ごとになっている。これを引き継ぐ形で、基本的には部署ごとにRPA用のIDも作成した。しかし、業務内容によっては上役の権限が必要な処理をRPAに扱わせたい場合や、並行処理させるために複数IDを持たせたい場合などもある。

「定期的にパスワードを変更しなければいけないというセキュリティポリシーに対応するためには、IDが増えて行くと管理が大変になります。少なくとも開発担当者は全体を把握していなければなりません。今後はロボット用のポリシーを作成するなど、何か対応が必要になるかもしれないと考えています」と藤本氏は語った。