富士通研究所と富士通は、電子機器に多く含まれる部品の1つである磁性体において、AIを活用することで、エネルギー損失を最小にする形状を設計する技術を開発したと発表した。

電子機器の電源内の電気エネルギーを蓄えるインダクタやEV用のモーターなどのさまざまな素子や機器で使われている磁性体は、磁気に起因し、エネルギーの一部が熱となって失われる磁気損失が発生する性質をもつ。この磁気損失は磁性体の形状によって変化し、素子や機器のエネルギー効率に直結することから、高いエネルギー効率を実現するためには、磁性体形状を磁気損失を考慮した設計にすることが重要になっている。

しかし、従来の磁性体形状の設計手法では、磁性体に特有の強い非線型性のために、磁気損失が最小となるような形状の最適解を探索することが難しく、形状を自動で設計することが困難だった。また、設計した結果をシミュレーションする際にも、磁気損失については実測値と比べて数倍から数十倍の違いが発生してしまい、設計開発に十分な精度予測ができなかった。

そうした状況を受け両社は、AIを活用することによって磁気損失を最小にする形状を仮想空間において自動設計する技術を開発。さらに、開発技術により設計したインダクタが、予測された磁気特性を持つことを確認した。

今回開発された高精度磁気損失シミュレーション技術は、インダクタ材料として主に用いられる磁性体であるフェライトの微細組織の誘電効果を定式化することで、インダクタに流れる渦電流の分布を正確に計算するというもの。

  • 左から、インダクタの磁気損失シミュレーション(磁性体内部の磁束密度分布)、実験と計算の比較

    左から、インダクタの磁気損失シミュレーション(磁性体内部の磁束密度分布)、実験と計算の比較

これにより、フェライトの磁気損失の主因となる渦電流損失の大きさを高精度に計算することが可能となり、インダクタの動作周波数が数MHzまでの広い動作周波数領域で磁気損失の推定誤差を10%以下にできるという。

またこの技術と、遺伝的アルゴリズムとを連携させて、磁気損失が少なくなるような形状パラメーターを自動で探索する方式も開発。広域探索に適した探索手法である遺伝的アルゴリズムにおいて、次世代集団を得る世代交代ごとに、優れた個体の割合を一定以上に保つように磁気特性を考慮したコントロールを行うことで、素早く安定的に磁気損失を最小にする最適解の集合を算出する設計最適化技術を開発した。

  • インダクタの自動設計結果(各点が1つのインダクタ形状に対応)

    インダクタの自動設計結果(各点が1つのインダクタ形状に対応)

インダクタの体積と磁気損失の値はどちらも小さい方が望ましいが、インダクタの主要な電気的特性であるインダクタンスを一定にするという制約条件を課したときには、両者はトレードオフの関係にある。その場合、同技術によって、そのどちらの値もそれより優れた形状は存在しないという最適設計の集合を自動で見つけ出すことができるとのことだ。

なお両社は、これらの技術を含む設計サービスを、2020年にクラウドサービスとして提供することを目指すとしている。