日本電信電話(NTT)は、無害でレアメタルフリーな低環境負荷な電池として、電池部材が肥料成分から構成された、土壌や生物へ悪影響を与えない電池「土に還る電池:ツチニカエルでんち」を作製し、電池動作を確認したことを発表した。

  • 回収困難なセンサとその解決イメージ

    回収困難なセンサとその解決イメージ

IoTの発展に伴い、さまざまなセンサがばら撒かれると予想されているが、センサや電池の交換・回収に関して十分な議論は行われていない。回収が難しいセンサ・電池はそのまま放置され、土壌や生物などへ大きな影響を及ぼす可能性がある。

NTTはこうした課題を解決する要素技術として、回収困難な場合も土壌や生物へ影響を与えない土に還る電池を発想し、研究開発を行ってきた。

これまでの電池は、長持ち・高出力な性能が求められていることから、発火等への安全を前提に高価なレアメタルや有害物質が使用されている。そのため、これらの電池を土壌に放置すると、本来土壌に含まれていない成分が土壌や生物に対して影響を与える可能性がある。

  • ツチニカエルでんちと従来電池の構成材料

    ツチニカエルでんちと従来電池の構成材料

今回、NTTは新たに低環境負荷(無害・レアメタルフリー)な材料のみで構成された電池を提案した。低環境負荷な材料には、土壌・生物等への悪影響を与えず土壌に還る「肥料成分」「生物由来材料」から選定している。

従来の電極は、結着材により粉末状カーボンを固形化し構造を形成しているが、結着剤はフッ素系樹脂等であり、燃焼時には有害ガスの発生、また土壌等に含まれていないため、低環境負荷な材料とは言えない。そのため、無害な結着材か結着材フリーな電極が望ましく、今回、生物由来材料に前処理を施すことで多孔体構造を有するカーボン化に成功し、結着剤自体が無いカーボン電極を実現した。

この電池の動作確認をしたところ、測定電流1.9mA/cm2において電池電圧1.1Vの電池性能を確認できた。また、この電池を数個直列につなぎ、市販BLE(Bluetooth Low Energy)の温度センサモジュールに接続したところ、センサモジュールからの信号を受信し、電池動作することを確認している。

また、電池が植物に与える影響を確認するために、肥料検定法に基づく植害試験(小松菜の発芽状態で評価)を行った結果、従来電池と異なり植物の成長に悪影響を与えないことを確認し、「土に還ること」というコンセプトを実現した。

  • 植物の成長への影響

    植物の成長への影響

今後は電池の性能向上を進めるとともに、NTTの強みである半導体技術を活用して「土に還るセンサ・回路」を実現し、ばら撒き型センササービスの提供を図るということだ。

なお、この成果は、2月22日~23日に開催される「NTT R&Dフォーラム2018」にて公開され、この模様は2月22日午後7時〜午後8時、ニコニコ生放送の「NTT R&Dチャンネル」で配信される。