楽天コミュニケーションズと宿泊事業者向け運用支援サービスを提供するSQUEEZEは2月1日、都内で記者会見を開き、効率的な民泊運営を可能とするIoTサービス「あんしんステイIoT」を共同で開発し、同日からSQUEEZEの顧客向けにサービス提供を開始した。価格は月額4300円(機器月額/オペレーターライセンス月額1000円/人)~。

  • 「あんしんステイIoT」の概要

    「あんしんステイIoT」の概要

今回、あんしんステイIoTとSQUEEZEが提供する宿泊事業者向けの運用支援サービス「suitebook(スイートブック)」を連携することで、鍵管理、宿泊者名簿作成、本人確認、騒音検知、宿泊者サポート、チェックアウトなどの宿泊事業に関わる運用業務の効率化を図るとしている。

また、宿泊者名簿作成や本人確認(身分証明書の写しの取得など)における大量の個人情報の取得・管理を楽天コミュニケーションズに委託することで、SQUEEZEおよび導入事業者は、個人情報管理における運用コストと事業リスクの低減が可能になるという。

19万室の宿泊施設を取り込む切り札となるか

楽天 副社長執行役員 CIO&CISO グループエグゼクティブヴァイスプレジデント 楽天コミュニケーションズ 代表取締役会長 兼 社長の平井康文氏は「民泊を含む法制度の整備や、訪日外国人の増加を背景に宿泊施設の需要拡大が想定されている。われわれの独自推計によると、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に宿泊施設は2018年比11万室増の19万室に達すると予測しており、法人が保有する宿泊施設は専門業者にアウトソーシングすることが見込まれる。結果として、宿泊施設の運用を代行する事業者の重要性が高まることが予想され、IoTによるサービスの需要がある」と、説明した。

  • 楽天 副社長執行役員 CIO&CISO グループエグゼクティブヴァイスプレジデント 楽天コミュニケーションズ 代表取締役会長 兼 社長の平井康文氏

    楽天 副社長執行役員 CIO&CISO グループエグゼクティブヴァイスプレジデント 楽天コミュニケーションズ 代表取締役会長 兼 社長の平井康文氏

一方、同氏は「宿泊施設の運用代行事業者のビジネススキームには、順法に伴う追加対応、運用物件数の急拡大、宿泊者の満足度向上をはじめとした運用工数の増大が大きな課題である」との認識を示す。

このような状況を踏まえ、通信インフラサービス、セキュリティソリューション、「楽天」の独自ブランド力に宿泊施設の運用実績とシステムの高度化、クラウドソーシングの活用に強みを持つSQUEEZEと、パートナーシップを組み、新サービスを共同開発した。

SQUEEZE 代表取締役CEOの舘林真一氏は「これまでは旅館業法と借地借家法、宅建業法などのはざまにはグレー民泊が存在していたが、6月15日に住宅宿泊事業法が施行され、民泊が解禁される。これは宿泊業界において新しいターニングポイントになる年になるのではないかと考えている」と、法律の施行により需要拡大が見込まれる民泊への展望を述べていた。

  • SQUEEZE 代表取締役CEOの舘林真一氏

    SQUEEZE 代表取締役CEOの舘林真一氏

コールセンターの対応時間を3分の1に短縮

新サービスは、タブレット、スマートロック、騒音検知、IoTゲートウェイで構成。主な特徴としてはIoT機器同士のシームレスな連携、SQUEEZEのsuitebookとの連携、個人情報の保護・セキュリティ対策の3点を挙げている。

  • あんしんステイIoTのシステム構成

    あんしんステイIoTのシステム構成

タブレットは、チェックイン・チェックアウト、宿泊者名簿の作成・保管、パスポートの取得・保管、テレビ電話による本人確認・サポート、スマートロック・騒音検知との自動連携をはじめとした機能、スマートロックはパスコードによる解錠、カードキー(Edyカードによる解錠)、自動施錠(ドアセンサ連携)、BLE経由での鍵情報設定、各種ログ取得・表示をはじめとした機能を持つ。

  • タブレットの概要

    タブレットの概要

  • スマートロックの概要

    スマートロックの概要

騒音検知は音響レベル(録音しない)の常時監視、音響レベルのグラフィカルな時系列表示といった機能、IoTゲートウェイはスマートロック・騒音検知とBLE接続、楽天モバイルSIMを通じてLTEでサーバと接続、ファームウェアバージョンアップなどの機能を備える。

  • 騒音検知の概要

    騒音検知の概要

  • IoTゲートウェイの概要

    IoTゲートウェイの概要

新サービスをSQUEEZEが有する物件を対象に分析した結果、1部屋あたりのコールセンターの対応時間が従来の80分から約3分の1の27分に短縮できることを検証したという。

将来的にはブロックチェーン技術を活用

将来的な構想について平井氏は「楽天が持つブロックチェーン技術を活用した『Rakuten KYC Platform』と連携する」と、意気込む。これは、プライベートエンタープライズブロックチェーンという観点では、データエクスチェンジのプラットフォームとなる。

  • 将来的にはブロックチェーンとの連携も検討している

    将来的にはブロックチェーンとの連携も検討している

同プラットフォームを活用することで、楽天会員が本人確認済みのステータスを、楽天のほかのサービス間で再利用することが可能になる。

これにより、楽天会員は新サービスが導入されている施設に宿泊する際に本人確認手続きのプロセスを簡略化することができるという。今後、新サービスはニーズに応じて、拡充することも検討しているほか、楽天の各種サービスとの連携を進める。

また、グループ会社の楽天LIFULL STAYは昨年11月に民泊・簡易宿所向けのブランディングおよび運用代行サービス「Rakuten STAY」の提供を開始しており、今回の新サービスと両輪でグループ一体で民泊事業者を支援していく方針だ。

  • 左から舘林氏、平井氏

    左から舘林氏、平井氏