ヴァイナスは10月12日~13日にかけて、都内で同社のユーザー会である「VINAS Users Conference 2017」を開催。メインテーマ「大規模高速計算・最適設計・ワークフローマネジメントのためのソリューション -オープンソースとクラウドコンピュータの設計利用-」をメインテーマに同社が提供する設計ソリューションや、ユーザー事例の紹介などを行った。

VINAS Users Conference 2017にて開会の挨拶を行ったヴァイナス代表取締役社長の藤川泰彦氏

初日、開催に際し、挨拶に登壇した同社代表取締役社長の藤川泰彦氏は、「次世代の最適設計とCAEの運用課題に応えるヴァイナスのソリューション」と題し、近年のCAEに対するニーズや、そうした動きに対応するべく進めている自社の取り組みの紹介などを行った。

「CAEは近年、停滞していると言われてきたが、それは社会のニーズが転換点を向かえ、CAEにも構造変換が求められるようになってきたため」と、藤川氏は現状を分析。ヴァイナスとしては、最適設計において、複数の関数を同時に扱うような大きな計算において、デスクトップであっても、クラウドであっても、シームレスに計算を実行し、その結果得られる複雑かつ大きなデータとしての解析結果を、どのように早く、設計のためのデータとして得るのか、という部分に進化の余地があるとして、対応するソリューションの強化を図っているとする。

社会ニーズの変化に伴い、製品開発の手法も変化する必要が生じている

「ソルバや最適設計に対するソフトウェアコストの低減をいかに実現させるか、という課題が産業界に生じている一方、考慮すべき設計要素が4個以上同時に行う必要がでてきて、出力されるデータの容量も肥大化し、設計評価も難しくなり、そうした新たな設計ニーズに対応するソリューションを新規に導入する必要性も出ている」(同)とのことで、各解析結果の自動設計評価を可能にする専用ツールを複数用意したり、ユーザーの評価基準に合わせたカスタマイズを可能としたグラフ機能拡張ツール「Plot Expert」の提供や、多目的な最適設計では、さまざまな相関関係を比較する対象が増え、人の力では判定が困難となってくるため、データ解析の可視化・分析を可能にする「Data Science Visualization」といったツールの開発を進めてきたとするほか、日本の研究機関により開発された技術を中心にそれらを統合した集大成とも言えるパッケージを「iDIOS」として、最適設計技術の新たなソリューションとして2018年にリリースする計画であるとした。

解析結果の自動設計評価を可能にする「Reporterシリーズ」。ターボ機械CFD解析専用や、エンジン内燃解析専用といった用途に応じて複数の製品が用意されている

汎用のグラフ機能拡張ツール「Plot Expert」。将来のバージョンでは、実験データのAI学習による近似モデルの予測精度向上が図られる予定だという

2018年の第1四半期のリリースに向けて開発が進められている新たな高速多目的最適設計システム「iDIOS」。日本の研究機関が長年培ってきた各種の研究成果のほか、米国サンディア国立研究所が開発した最適設計ライブラリ「DAKOTA」などで構成される

iDIOSの最も革新的な部分について同氏は、「目的関数が4つ以上同時に扱える高速・最適設計探査計算を実現する技術を採用したところ」とするほか、そのほかにも、最適設計のワークフローをWebベースで構築できたり、データサイエンスの可視化なども可能だとする。「ヴァイナスでは、コスト削減のためにオープンソースを活用していく方針を掲げているが、最も重要なのは、要素技術を総合的にシームレスにサポートしていくことである」とし、今後もネットワーク上で動くフルターンキーソリューションの実現を目指した取り組みを進めていくことを強調。時局に合わせたサポートを提供していくことで、カスタマの最適なパートナーとなることを目指していくとした。

ヴァイナスでは、CAE領域へのAIの応用に関する研究にも参画。そうした研究開発の一環で、2次元のメッシュ品質の95%以上の確率で良否を判定できることを確認したほか、その結果を前段階にフィードバックし、より高い精度のメッシュ生成につなげるといった取り組みを進めているという

ヴァイナスの目指す古ターンキー多目的設計システムのイメージ。プリプロセスからポストプロセスまで、どういったネットワークであっても対応することが可能といったものを目指している