理化学研究所と富士通は、スーパーコンピュータ「京」による測定結果で、産業利用など実際のアプリケーションで用いられる共役勾配法の処理速度の国際的なランキング「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」において、2期連続で世界第1位を獲得したと発表した。

HPCGは、世界中のコンピュータシステムの性能を評価する指標のひとつ。コンピュータシステムの性能を評価する指標としては、連立一次方程式の処理速度上位500位までを定期的にランク付けし評価するプロジェクト「TOP500」があるが、TOP500は、連立一次方程式を解くベンチマーク・プログラムLINPACKが評価指標となっている。TOP500は、プロジェクトが発足から20年以上が経過し、実際のアプリケーションで求められる性能要件との乖離やベンチマークテストにかかる時間の長時間化が指摘されている。

そこで、産業利用など実際のアプリケーションでよく使われる計算手法である共役勾配法を用いた新たなベンチマーク・プログラムHPCGが提案された。スーパーコンピュータの性能をより多くの視点から評価するための新しい国際的なベンチマークとして、2014年からランキングが発表されており、前回、2016年11月のランキングでも、「京」は第1位を獲得した。なお、同ランキングは、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議であるISC17で発表された。

測定には、「京」が持つ全計算ノード82,944台が用いられ、602.7TFLOPS(テラフロップス)という高いベンチマークのスコアを達成した。「京」はTOP500では第8位だが、このスコアはTOP500で「京」よりも上位で約9倍のスコアを持つ「神威太湖之光」などを上回っており、CPUの演算性能のみならずメモリやネットワークも含めたシステム全体としての性能バランスを重視して設計開発された「京」が、産業利用など実際のアプリケーションを非常に効率よく処理し、高い性能を発揮することを証明しているという。

今回のHPCGでの第1位の獲得と、同じくISC17において発表されたTOP500第8位という結果と合わせて、幅広い分野のアプリケーションで成果を創出する「京」の総合性能の高さが、改めて実証されたということだ。