京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は2月13日、筋強直性ジストロフィの病因であるCTG繰り返し配列が伸長するという現象を、患者由来iPS細胞で再現したと発表した。

同成果は、京大CiRAの大学院生 植木絢子氏(研究当時、現在・京大医学部附属病院 糖尿病・内分泌・栄養内科 医員)、櫻井英俊准教授、大阪大学医学部神経内科学講座 中森雅之講師らの研究グループによるもので、2月13日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

筋強直性ジストロフィ1型(DM1)は、DMPK(DM protein kinase)という遺伝子にあるCTGリピートが数百~数千リピートにまで伸長してしまうために発症する。DM1患者からの血液や生検サンプルなどを用いた研究で、年齢を経るごとにCTGリピートが伸長すること、組織ごとに異なったCTGリピート数を呈することがこれまでに明らかとなっているが、生検組織を使った研究では、どうやってCTGリピートが伸長するかを解明することは困難であった。

今回、同研究グループは、3名のDM1患者からiPS細胞を作成。DM1患者由来iPS細胞では、CTGリピート伸長は主に未分化細胞の継代培養の際に起きていることを明らかにした。 しかしiPS細胞から、神経、心筋、骨格筋といった組織に分化させたときには、それほどCTGリピートが伸長しないこともわかった。さらにDM1患者由来iPS細胞を心筋細胞に分化誘導した際、健常者由来の心筋細胞と比較して、CTGリピート付近のクロマチン構造が変化していることも発見。現段階では、この変化がCTGリピート伸長の原因であるのか結果であるのかは不明だという。

同研究グループは今回の成果について、DM1患者由来iPS細胞はCTGリピートの伸長というDM1の病因を解析するのに非常に適したツールであることを示したものであると説明している。

実験デザインのイメージ。DM1患者から作製したiPS細胞をおよそ10継代ごとに心筋細胞・神経細胞に分化させた(左)。 また骨格筋へ分化させるためにMyoD1遺伝子を導入したiPS細胞を作製し、10継代ごとに骨格筋細胞に分化させた(右) (出所:京大CiRA Webサイト)