京都大学は5月22日、細胞内マイクロRNAを使って細胞を選別する人工RNA(RNAスイッチ)を用い、自動的に心筋細胞以外の細胞が取り除かれるシステムを開発したと発表した。

同成果は同大学iPS 細胞研究所の三木健嗣 研究員、遠藤慧 研究員(現東京大学大学院新領域創成科学研究科)、齊藤博英 教授、吉田善紀 講師らによるもので米国科学誌「Cell Stem Cell」に掲載された。

ES細胞やiPS細胞など幹細胞から高純度の心筋細胞を得るためには、細胞表面の抗原を識別して細胞を選別する必要がある。しかし、心筋細胞には特異的な抗体が無く、ゲノムに傷をつける可能性があるDNA導入などを使わないと高効率に純化することは困難だった。

そこで研究グループは、マイクロRNAを検知することで細胞を識別する方法の開発に着手。心筋細胞に特徴的なマイクロRNAを同定し、そのマイクロRNAが存在しない時だけ蛍光タンパク質が光るRNAスイッチを作製した。また、この仕組を応用し、蛍光タンパク質の代わりに細胞死を誘導する遺伝子を導入し、心筋細胞のマイクロRNAを持たない細胞では細胞死が起きるシステムを構築した。これにより、機械で選別することなく、高純度に心筋細胞だけを培養することに成功した。

同システムは上皮細胞や肝細胞、インスリン生産細胞などにも応用可能とのことで、従来では選別が難しかったさまざまな細胞が取得できるようになり、幹細胞分野における幅広い研究での活用が期待される。

マイクロRNAを利用したRNAスイッチの概念図