ルネサス エレクトロニクスは2月25日、フラッシュメモリ内蔵マイコン(フラッシュマイコン)向けに、さらなる高速読み出し・書き換えを実現するフラッシュメモリ技術を開発したと発表した。

詳細は、2月22日から米国サンフランシスコで開催されている「国際固体素子回路会議ISSCC 2015(IEEE International Solid-State Circuits Conference 2015)」にて発表された。

セルの微細化により、メモリセルの読み出し電流は減少する。ワード線(メモリセル選択用ゲート)電圧のオーバードライブにより必要な読み出し電流を確保することもできるが、周辺トランジスタの高温下での信頼性悪化が懸念されている。今回、メモリセル電流と周辺トランジスタの信頼性の温度依存性が逆依存であることを利用し、ワード線電圧に負の温度依存性を付加することにより、周辺トランジスタの信頼性寿命を、単純なワード線オーバードライブに対して10倍以上改善し、200MHzの高速読み出しと高信頼性を両立させた。

さらに、消去速度をモニタし、消去が速い時は消去の最高電圧を抑制するよう制御することで、絶縁膜の信頼性が厳しい高温で消去ストレスを緩和する技術を開発した。これにより、微細化に伴うメモリセル、および高電圧メタル配線間の絶縁膜の薄膜化による消去時の高電圧ストレスへの耐性低下に対しても高い信頼性を実現できる。

また、書き込み動作時にメモリセルのウエル電位を負電圧とすることによる書き込みパルス印加時間短縮技術と、複数のフラッシュモジュールの並列書き込みによる高速書き込み技術を開発した。これにより、混載フラッシュとしては最速クラスの書き込みスループットとなる2.0MB/sを達成した。

加えて、フラッシュ書き換えのための高電圧を発生する昇圧回路の駆動クロックをSSCG(Spread-Spectrum Clock Generation)化し、フラッシュ書き換え時の電源/EMIノイズを大幅に低減する技術を開発した。これにより、OTA(Over-The-Air)によるプログラム更新など、フラッシュ書き換え時の電源/EMIノイズによるシステム全体動作への影響を最小限に抑えられる。

そして、これらの技術を適用した、28nmフラッシュによる4MBプログラム格納用フラッシュメモリと64KBデータ格納用フラッシュメモリを試作し、大容量プログラム格納用フラッシュメモリで業界最速となる200MHz以上、6.4GB/sの高速読み出し動作を実現した。従来の40nm世代プロセス品では160MHzまでの読み出し動作を確認していたが、同技術により25%の特性改善が確認できた。また、大容量化されてくるプログラム格納用フラッシュメモリにおいて要求される書き込み時間の高速化では業界最速となる2.0MB/sの書き込みスループットを確認した。これは、40nm世代プロセス品の約2倍の特性改善であるという。