東京工業大学(東工大)は11月12日、火星誕生時に火星内部に取り込まれた水(初生的)の高精度水素同位体分析を行ったことを発表した。

同研究は、同大 地球惑星科学専攻の臼井寛裕 助教、NASAジョンソン宇宙センターおよび米カーネギー研究所の研究者らによるもの。詳細は、学術誌「Earth and Planetary Science Letters」に掲載された。

火星は約30億年より古い地質体を中心に多くの流水地形が存在し、かつては表層に液体の水が存在しうるほど温暖で湿潤な惑星であったと考えられているが、現在までに生命の存在条件に支配的な影響を与える火星の海の水の起源や進化に関する統一した見解は得られていない。

今回の研究の結果、火星の初生的水の水素同位体は、地球のそれと同様の値を示し、地球と火星の水が互いに似通った太陽系小天体を起源とすることが判明したという。

また、火星や地球の水の起源となった太陽系小天体は、従来研究により示唆されてきた太陽系外縁(例えばオールト雲)を起源とする彗星ではなく、火星-木星軌道間に位置する小惑星(炭素質コンドライト母天体)であることも同時に明らかとなったという。

地球型惑星の"水"の水素同位体組成図。重水素/水素比(D/H)を地球の標準海水(SMOW)からの千分率(δD)で示したもの。火星の大気は5000‰を超える高いD/H比を示すのに対し、マントルに含まれている初生水(▲)は地球と同様の低いD/H比(275‰)を有することが判明した。また、地球型惑星の水の起源と考えられている、彗星(~1000‰)および小惑星(炭素質コンドライト母天体、-200から300‰)の水素同位体も合わせてプロットしたものとなっている