ルネサス エレクトロニクスは6月27日、日立情報通信エンジニアリング、大阪大学、大阪市立大学と共同で、新しい省電力スライス化ルータアーキテクチャの設計と、評価用ボードの試作を行い、実証実験でその有効性を確認したと発表した。

近年のネットワーク市場の急速な成長に伴い、ネットワークを構成するルータやスイッチなどのネットワーク機器における消費電力が増大しており、エネルギー問題の観点から、その解決が求められている。これまで、ルータなどのネットワーク機器はトラフィック量の変動に関係なく、常に100%の処理能力で動作することを前提として設計されてきており、夜間や休日などのトラフィック量が少ない場合には、消費電力に無駄が生じていたいたころから、トラフィックエンジニアリング技術や、サービス規約(SLA:Service Level Agreement)によって定められた通信品質を最低限守るような省電力化手法の研究が進められてきたものの、ネットワーク品質の維持と効果的な電力削減の両立が困難という課題があった。

今回の研究では、こうした課題の解決に向け、IPネットワークの信頼性を損なうことなく、消費電力の効果的な削減に向け、ルータが処理すべきトラフィック量に応じて処理能力を段階的に調整可能なアーキテクチャの研究が進められた。

今回開発された省電力ルータアーキテクチャの主な特徴は3つ。1つ目は独立動作可能なサブ・コンポーネント(スライス)へ機能を分割し、スライス単位でホットスタンバイとコールドスタンバイの2種類のスタンバイ状態をサポートする、スライス分割動作技術。2つ目はトラフィックの統計情報を収集し、過去から現在までの統計データから将来のトラフィック量をマイクロ秒オーダーで高精度に予測する、トラフィック予測化技術。そして3つ目がトラフィック予測化技術と連動し、トラフィック量の増減やパケットデータの滞留状況に応じて必要十分な数のスライスのみを動作させて不要なスライスをスタンバイ状態にする、スライス制御技術である。

また、これら3つの特徴を持つ省電力ルータアーキテクチャをLSIと評価ボードに実装した評価システムを用いた実証実験を行った結果、0~40Gbps帯域において最大で約70%の電流削減効果を確認するとともに、コールドスタンバイからアクティブへの約210μsで復帰できることが確認されたという。さらに、省電力ルータをネットワークシステムに応用するために、省電力ルータを内包するネットワーク環境について、帯域計測手法や通信プロトコル設計に関する研究を実施し、その有効性も確認したとしている。

なお、今回の技術について研究グループは、パケット処理量に応じて、必要なだけのスライスを使用して処理し、他のスライスは動作を停止させることで電力の消費を抑制できることから、次世代ネットワーク機器の低消費電力化を実現できるものになると期待されるとコメントしている。

今回の産学官連携による開発内容