ゲリラ豪雨や竜巻などの構造や降雨の様子を、3次元的に10秒間隔で観測する「フェーズドアレイ気象レーダ」を情報通信研究機構と大阪大学、東芝が共同開発し、同大学・吹田キャンパス電気系建屋の屋上で試験観測を始めた。フェーズドアレイ・レーダは艦船用、航空機用、警戒管制用としての実用化が先行しており、気象用として開発されたのは日本では初めて。将来は局所的・突発的な気象災害の監視や短時間予測などに役立つことが期待されるという。

台風や低気圧、梅雨前線などの降雨を観測するため、現在は大型の気象レーダが日本全土を覆うように配備され、最近では、都市域の降雨をより細かに観測できる小型の「XバンドMPレーダ」も大学や研究機関、国土交通省などによって導入されつつある。ところが、これらのレーダは、パラボラアンテナを機械的に回転させて観測を行うため、地上付近の降雨分布観測には1-5分、降雨の3次元の立体観測には5分以上の時間が必要だった。局地的な大雨をもたらす積乱雲は10分程度で急速に発達し、竜巻は数分で発生して移動するため、より短時間で詳細な3次元構造を観測できる気象用のフェーズドアレイ・レーダの開発が待たれていた。

完成した「フェーズドアレイ気象レーダ」は、大電力のマイクロ波を通す長さ2メートルの導波管(スロットアンテナ)128本を横にして並べ、それぞれから電波を5-10度の仰角で発信する。雨粒の散乱で戻って来た電波を再び各スロットアンテナで受信し、その受信データを合成処理することで高精度の観測値を得る。従来のパラボラアンテナ観測では、アンテナの仰角を変えながら十数回回転させる必要があったが、フェーズドアレイ気象レーダではアンテナを1回転させるだけで半径15-60キロメートル、高度14キロメートルの範囲で、詳細な3次元降水分布の観測が可能だ。観測時間も半径30キロメートル以内なら10秒間隔、60キロメートル以内なら30秒間隔で観測できるという。

大阪大学・吹田キャンパスには今年5月設置され、これまで調整作業が進められていた。今後は、局地的大雨や集中豪雨などを対象に性能評価試験を兼ねた観測を行い、実用化を目指す。

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