STMicroelectronicsは11月30日、ARM Cortex-Mベースの同社32ビットマイコンファミリ「STM32」として、Cortex-M4および同M0を採用した新製品を含んだ製品ロードマップとCortex-M3を採用した新シリーズ「STM32 F2」を発表した。

STMicroelectronicsのMMSグループ マイクロコントローラ事業部 32bitマイクロコントローラ担当であるSemir Haddad氏

同社MMSグループ マイクロコントローラ事業部 32bitマイクロコントローラ担当のSemir Haddad氏は、マイコン市場について、「無数のアーキテクチャがあるため、4/8ビット、8/16ビット、16/32ビット、32ビット+DSPなど、市場が細分化されており、独自のコアが乱立しているため、互換性の確保ができず、しかもそれぞれのプラットフォームにあわせたツールチェーンの存在により、開発が非効率になっている」と指摘、カスタマにとってはそれぞれに合わせた開発環境を用意する必要があるため開発コストの増大が問題となってきているとする。

STMicroとしては、ARMコアを活用したSTM32により16/32ビット市場をカバー、「Cortex-Mベースのマイコンは市場に好意的に受け入れられている。特にSTM32は、2010年の上半期において、出荷ベースの市場シェアで50%以上を獲得するまでに成長してきた」とするが、8ビット市場やDSP対応などの面ではまだまだ不足しており、「8ビットマイコン市場向けとして、Cortex-M0をベースとした低コストマイコンを、そしてDSPなどの高い処理性能が求められる分野については、Cortex-M4をベースとしたマイコンを用意、これにより、Cortex-Mで統一されたマイコンポートフォリオとして、幅広い用途に対応することが可能となり、カスタマニーズを包括的にサポートできるようになったことで、従来以上の開発容易性が提供できるようになる」とした。

STM32登場前のマイコン市場が左、中央が従来のSTM32(Cortex-M3)がカバーする領域。今回、Cortex-M0とCortex-M4を搭載したSTM32が入ることで、カバーする領域が大幅に広がることとなる

Cortex-M0、同M4搭載マイコンがSTM32に追加されることにより、STM32を搭載されるコアで考えると、3種類のラインアップとなる。なお、Cortex-M0およびM4のマイコンについては、「2011年半ばにサンプル出荷を開始し、2011年末の量産出荷を開始する予定」としている。

Cortex-M0/3/4それぞれの製品ラインアップのロードマップ

一方のCortex-M3搭載STM32の新シリーズとなるSTM32 F2シリーズは、従来のF1シリーズを用いたカスタマからの「高性能化やメモリの大容量化、低価格化といったニーズに加えて、各種の新機能を搭載。そして、既存製品ではパフォーマンスが不足して対応できなかった領域への対応を目指した」ということで、90nm組み込みフラッシュメモリプロセスならびに独自のART Accelerator(メモリアクセラレータ)を採用、最大1MBのフラッシュメモリと同128KBのSRAMを搭載し、かつ150DMIPS(120MHz)の性能を実現。また、新機能として、CMOSカメラインタフェースや暗号化エンジン、USB2.0-OTG High Speed(×2)などを搭載している。

パフォーマンスの向上としては、プロセスの微細化によるものに加えて、ART Acceleratorの存在が大きいと同氏は指摘する。同技術は、プロセッサコア(AMBAバス)とフラッシュメモリの間にアクセラレータ/キャッシュの役割をするフラッシュインタフェースを配置。フラッシュメモリと同インタフェース間のデータのやり取りを128ビット幅で行い、同インタフェースとプロセッサコアとの間を一般的な32ビット幅で行うこと、ならびに良く使われる機能をキャッシュとして保存しておくことで、フラッシュメモリからのゼロ・ウェイト実行で150DMIPS(120MHz)を実現する機能だという。

STM32 F2で搭載された各種機能とブロック図

また、低消費電力性能の向上も図っており、動作電圧が1.65~3.6V(1.65VはWLCSP品のみ、それ以外は1.8Vから)に対応しつつ、RTC動作時で1μA以下の消費電流を実現しているほか、動作時消費電流も188μA/MHz(EEMBC認定のCoreMarkテストプログラム動作時)で120MHz動作時では22.5mAに相当する(内蔵フラッシュメモリから実行時)という。

さらに、暗号化機能として、専用ハードウェア・アクセラレーションならびに32ビットの乱数発生器(RNG)を含む暗号ブロックを搭載。AES128/192/256に対応するほか、トリプルDES、およびHASH(MD5、SHA-1)などに対応することが可能となっている。

STM32 F2が狙うアプリケーション例(左)。青い文字部分が特に日本市場での成長が期待できる分野としている。右は評価ボードで、カメラも搭載、OSはMicriumのμC/OS-IIが用いられている

パッケージとしては、LQFP64、LQFP100、LQFP144、UFBGA176、WLCSP64を用意、製品ラインアップとして30種類以上が用意されている。すでに全世界20社以上にサンプル出荷を開始しており、2011年第1四半期に量産出荷を開始する予定としている。

STM32 F2の製品ポートフォリオ