収支改善方法として田村氏は、「最初に行うべきは自院の収支構造の把握。医療法人の支出は約半数が人件費であることが特徴で、特に人数が多いことから看護士の人件費が大きな割合を占めている。短期的な効果が見込めるのは委託費の削減だが、長期的に考えた時には、人件費にも多少手を入れなければならなくなるだろう。特に看護士の人件費は削減するというよりは、いかに高騰させないかという工夫が必要」と指摘した。
具体的な改善方法としては、理念、目指す姿、組織、資源(ヒト・モノ)、機能(実行・管理)、風土という6つの経営要素が挙げられ、さらにその内容として10の利益拡大ポイントを挙げて解説された。
目指す姿の設定については、目先の課題を解決する場当たり的な対策ではなく、最終目標をしっかりと設定した上で、ビジョンを共有することの重要さが改めて確認された。
多くの病院で行われている部門を横断した委員会活動についても、「診療プロセスの各工程において部門間が連携すべき事項を標準化し、日常的な連携プロセスの管理を行うことが重要だ」と指摘。人的資源や物的資源に関しても、成り行きで成長・利用を行うのではなく、計画的な育成や稼動管理が求められているという。
また、委託業務の実態を詳細に把握することでコストを適正化する、地域連携による患者還流促進に加えて、患者一人一人のトータルライフケア管理を行う、患者満足度の把握と向上に向けて情報の一元管理を行う、業績管理を昨年度実績に頼るのではなく、軸目標とGAPを抽出することで対策を実施することなど、機能面・管理面での改善・改革の必要性が強調された。
「赤字から黒字への転換だけでなく、現在黒字の病院でも収支をより向上させるためには重要なポイントとなる部分」と田村氏は語り、改革領域ごとの多彩な課題について5段階での自己診断実施を促した。