まちづくりや建築のプロジェクト、芸術とのコラボレーション

東京大学公共政策大学院の客員講師 松浦正浩氏は、まちづくりのプロセスにおいて"仮想空間"と"現実"では、どういった部分が異なるのかを研究中である。一般ユーザーから協力者を募り、広大な土地を使った「持続可能性の高いまちづくり」と、小規模区画を使った「都市計画規制の合意形成」を試みる。土地のレンタルは、第一期を今夏に、第二期を今秋に開始して間もないため、今後の研究結果が気になるところだ。

首都大学東京 准教授 渡邉 英徳氏は「コンテンツ指向の空間」をテーマに、写真家とのコラボレーションで仮想空間内で巨大写真展を開催するなど、他分野とのコラボレーションをいくつも手がけている。9月には認知科学者の羽尻公一郎氏とのコラボレーションにより、米大統領候補のオバマ氏とマケイン氏の過去の発言を元に、自動的に両氏の会話を生成するアートプロジェクト「オバマケイン」を、ニューヨークで開催された展覧会に出展した。芸術や建築の大掛かりなプロジェクトやコラボレーションができてしまうのも3D空間を利用するメリットのひとつだ。

"能"をテーマに貴重資料の「3D化」と伝統文化の継承

法政大学情報技術研究センターでは、国際遠隔教育について研究を進める一方、貴重資料の"3D化"を目的に、同大学の能楽研究所と共同で「能楽研究所 in SecondLife」プロジェクトを進めている。「日本から世界へ向けての情報発信を活発化するうえでも、日本ならではのコンテンツを有効的に利用していきたい」と同センター事務室主任 日野好幸氏は語る。

立命館大学でも、同大学映像学部教授 副学部長 細井浩一氏から、"能"を題材にした研究について報告された。同大学では、人間国宝の"能"の動きをモーションキャプチャし、アバターで再現するといった研究や、京都の伝統着物をアバターに着せて表現するなどの試みが行われている。また、京都や関西の大学、行政、産業支援機関と協同で「3Dインターネットビジネス研究会」を設立し、仮想ラボ「Kyoto 3Di Lab」でいくつかのプロジェクトを進行中だそうだ。

文化や伝統を3Di環境で表現できるようになれば、体験学習の場としてもだが、海外へ日本を紹介できる場としても活用可能になる

2次元上でデータ化するには限界のある文化資料や貴重資料を3次元上で活用し、あるいはアーカイブ化するといった研究は今後各方面から注目されそうだ。