子どもの体験学習の場として、学生のキャリア実践の場として

早稲田大学客員研究員 殿岡良美氏は、アバターが動き、オブジェクト作成ができる3次元空間ならではの特徴を"ものづくりの伝承"に活かそうという研究を進めている。「インフラやライフスタイルが大きく変わる中、これから必要とされる人材育成の場として、体験的な知識を習得できる3Dプラットフォームの活用を、日本は世界に先駆けて行っていくべき」と殿岡氏は語る。

宮城教育大学 技術教育講座准教授 安藤明伸氏は、仮想空間でのものづくりを通じて、工具の操作方法や体の動かし方、怪我のシミュレーションによって安全指導を行える教材開発を進めている。「最近、立体感覚を把握して実際の動きをとることが苦手な子が多く、言葉だけでは指導するのが難しい。例えば『手首のスナップを利かせて』と言っても理解できない。安全面のこともあるので、現実では不可能な体験学習を実践できればと考えている」(安藤氏)。

言葉では理解できない動きもバーチャルで体感することで学習可能になる。また、現実では危険を伴う体験学習もバーチャルなら可能だ

学生のキャリア開発の一環として"セカンドライフを用いた学習ゲーム"の開発構想を持つのは駒澤大学 グローバル・メディア・スタディーズ学部准教授の山口浩氏だ。「学生たちにとって、経済のしくみを学ぶのもそれなりに大事だが、それよりも"実際に詐欺に会わない法"を学ぶほうがよっぽど有効ではないか。自分の行った状況判断がシビアな結果を招いてしまうといった体験を、シミュレーションゲームを通じて楽しく学習できれば、実社会に出た時に強みになるはず」と話していた。

フラットな学習・体験の場として

SecondLife University」は、「いつでも、どこでも、だれでも」をコンセプトに、「理想の大学」を目指すプロジェクトである。それを示すように、時間的に制限のあるサラリーマン、地方在住の人、車椅子で生活する人など、セカンドライフ内で自然発生的に集まった人たちがメンバーとなって構成されている。現在はバーチャルキャンパスで有識者講義や学生講演が行われており、さらに障害者支援やコンテンツの拡充に力を入れながら、SNSやブログともリンクさせて可能性を広げていきたいという。

宇宙教育活動を行う「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」も、3Diを多くの子供たちの体験の場として期待している。最近の科学教育の現場では、実験環境も少なくなり、また、自然の中へ出て体験学習をするといった機会が非常に少なくなっている。「JAXAがオリジナル撮影したハイビジョン映像などを効果的に見せるために、仮想空間を組み合わせたプログラム作りを考えたい。地域などの参加条件に縛られないで、多くの子どもたちに体験してもらえるイベント開催が可能になるのではないか」とのことだ。