EMCジャパンは14日、米EMCが3月19日に発表した「2008年度 世界情報遺産保護プロジェクト」受賞7団体のひとつである一橋大学大学院社会学研究科「平和と和解の研究センター(CsPR)」に対し、同賞の授与を行った。世界情報遺産保護プロジェクトとは、デジタル化されていない貴重な歴史的資料や文化遺産をデジタルアーカイブ化するべく取り組んでいる個人や組織に対し、EMCがワールドワイドで支援するプロジェクト。今回受賞した7団体に対して、合計10万ドルがEMCから援助される。

一橋大学大学院社会学研究科「平和と和解の研究センター」のメンバー。右から、濱谷正晴教授、吉田裕教授、足羽與志子教授、ジョナサン・ルイス助教授、中野聡教授、高橋俊之氏(EMCジャパン)

EMCジャパン 執行役員 マーケティング本部長 高橋俊之氏

EMCジャパン 執行役員 マーケティング本部長 高橋俊之氏は同プロジェクトの目的について、「2010年には世界で生成されるデジタル情報量は1兆8,000億Gバイト(1.8ゼタバイト: 1ゼタバイトは世界中の砂浜の砂粒の数と同じ)にも上ると言われている。一方で、アナログ状態のままの貴重な情報が数多く存在するのも事実。こういったデジタル化による保護が必要な情報を、効率よく保存し、有効に活用するために、EMCの得意とする技術やノウハウを生かしていきたい」と語り、「情報の保護」と「瞬時のアクセス」の双方を実現することを支援していくという。

同プロジェクトを受賞した一橋大学大学院社会学研究科「平和と和解の研究センター(CsPR: "シスパー"と読む)」は、2007年4月に設立され、現在15名の教員が社会科学の総合的研究および教育にあたっている。CsPRは「平和と和解を私たちの生きる社会にもたらすために、現代の社会科学は、平和と和解の問題のみならず、戦争、紛争、対立、暴力、記憶、表象、政治等の平和と和解に関係する諸問題をどのように思索し、人々や社会にどのような貢献ができる」(CsPR Webサイトより抜粋)かを目的としており、「論文を書くだけでなく和解につながるようなさまざまな提言を行い、公開講演やワークショップなどで市民に向けても参加を呼びかけている」(一橋大学大学院社会学研究科 ジョナサン・ルイス助教授)という。今回の受賞により、同プロジェクトに対して1万5,000ドルがEMCから援助されるが、これは以下の活動に使用される予定。

  • 被爆者調査のデジタル化…1965年から同大学で開始された被爆者に対する聞き取り調査資料。手書きの紙媒体資料がほとんどのため、デジタル化が急務。プライバシーの問題などから早急な公開は難しい。情報公開よりもまずは保存を重視
  • 第2次世界大戦のフィリピン関連資料公開…マニラ戦などの経験者が語った資料。オーディオテープが中心なので、1年ほどでデジタル化が完了する見込み。メタデータの整理/見直しが必要で、いかに正確な情報として公開するかが課題
  • インフラへの投資…CsPRではオープンソースのCMS(コンテンツ管理システム)"Plone"および音声や動画データを扱う"Plone4Artists"を採用しており、賞金の一部がコミュニティに寄付される。また、国際規格(Dublin Core Metadate Initiative)に沿ったデジタルデータとして公開すべく、データを整備

一橋大学大学院社会学研究科 ジョナサン・ルイス助教授。Ploneコミュニティのメンバーでもある。「文系の大学がこういった賞をもらえるのは珍しい。賞金も多すぎず、ちょうどいい額で使いやすい(笑)」

また、ルイス助教授は、日本の大学における情報遺産保護の状況について「欧米の大学に比べ、資料管理が図書に偏重しすぎているきらいがある。また、保存メディアもばらばらで、教員個人に頼った資料管理も目立ち、担当教員以外、誰も存在に気づかない資料も多い。デジタルアーカイブ化は日本の課題」とし、情報資産の長期保存とアクセスの自由度を実現するためにもデジタル化のすみやかな促進は欠かせないとした。

2008年度 世界情報遺産保護プロジェクトには全世界から352件の申請があり、そのうち48件が最終候補に絞り込まれ、最終的にはCsPRを含む7団体が受賞した。EMCは7月1日から2009年度の同プロジェクトの募集を開始する。