連載形式でお送りしている「大人の自由研究企画」。今回も前編に引き続き、内田洋行の自由研究企画をお届けする。前編では、ロボットトイ「toio(トイオ)」を中心に紹介したが、後編では「toio」を通して内田洋行が考える「プログラミング教育のこれから」を中心にお送りしよう。

ロボットトイ「toio」って?

前編でも紹介したが、「toio」について少しおさらいしたい。「toio」とは、ソニー・インタラクティブエンタテイメントが開発し、内田洋行と共にプログラミング教育の教材として展開を進めているロボットトイである。

  • 「toio」を使用した学習イメージ

「toio」は立方体の形状をしたロボットで、PCやタブレットと無線で接続することで、アプリケーション上に入力した指令・プログラムに合わせて動くという仕組みになっている。

さまざまな学年や教科で使用できるカリキュラムやサンプルプログラムは20種以上無償公開されており、すぐに授業で使用することが可能。カリキュラムの難易度や指令の複雑さは、単元別や対象学年別(小学生~中学生~高校生)に細かく設定されており、まさにプログラミングの基礎を学べる教材なのである。

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント 田中章愛氏

では、具体的にはどのような学習方法が用意されているのだろうか。田中氏によると、「toio」には、以下の3段階の学習方法があるという。

小学校低学年

小学校低学年向けに、「アンプラグドプログラミング」を使ったプログラミング学習が提供されている。これはPCを使用しないプログラミングで、主に命令カードを使用して学習を進める。「toio」では『GoGo ロボットプログラミング ~ロジーボのひみつ~』というパッケージが用意されており、論理的思考力の育成を目指し、プログラミング教育の基礎としての順次処理や繰り返し、条件分岐を中心に学んでいく。

小学校中~高学年

小学校中~高学年向けには、「ビジュアルプログラミング」を使ったプログラミング学習への移行を提供する。「toio Do」というScrach3.0と同じブロックのプログラミング環境を活用し、PCの基本操作やプログラミングの基礎など、情報教育の基礎を学んでいく。その後に発展学習として、センサーの活用やAI学習などを行うことで、社会問題の解決にも通じる考えの育成を目指す。

中学校~高等学校

中学校~高等学校向けには、JavaScriptやPythonを使用したテキストプログラミングを提供する。小学校で段階的に学んできた基礎をもとに、簡単なコーディングや大学入学共通テストに向けた基本知識の習得ができるようなカリキュラムを学んでいく。

このように、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが開発・発売している「toio」を、内田洋行が公教育向けにカリキュラムやオリジナル教材を開発することで、一貫したプログラミング教育を学ぶことができる。

内田洋行が見据える、プログラミング教育の未来とは

教育現場で今、『プログラミング教育』が必須となっている状況は前編でも紹介しており、改めて言うまでもない。

新しい学習指導要領では、2020年度の全小学校でのプログラミング教育の必修化を皮切りに、2022年度からは高等学校でも「情報Ⅰ」が必履修科目としてスタートし、全生徒がプログラミング教育のカリキュラムを履修し始めた。また、2025年度からは大学入学共通テストにもプログラミングの知識を試す内容が導入されるそうだ。

2020年を機に、ここ数年でプログラミング教育への大きな流れの変化が起きている中、「toio」のカリキュラムをはじめとした教材開発を担当している内田洋行の足利氏はどんな教育の未来を見据えているのだろうか。同氏は以下のように話す。

「私たちは これからますますコンピュータに命令する(プロンプトを入力する) 機会が身近になり増えていくと予想しています。そのため、コンピュータのことをもっと理解し、コンピュータに命令を行う能力をさらに高める教育が必要になってくるのではないかと考えております」(足利氏)

  • 内田洋行 足利昌俊博士

2022年に全世界に大きな影響を与えたChatGPT や大規模言語モデル・生成AIの公開も、プログラミング教育の方針や人工知能と私たちとの関わり方に大きな変化をもたらした。

「もっとコンピュータのことを理解し、コンピュータとのコミュニケーション能力を高めることにより、『人工知能に使われる人材』から『人工知能を活用できる人材』を育成していくことが大切だと考えています」(足利氏)

筆者としては、足利氏の話を聞いて「人工知能を活用できる人材」となるためには、現在の小学校~高等学校で行われているプログラミング教育を含む情報教育に連続性を持たせることが重要なのではないかと考える。だからこそ、コンピュータを使用しなくてもプログラミングの基礎である「順次・分岐・反復といった条件3原則」を学べる教材や、そこからの発展的な内容までを網羅している「toio」は、教育現場でのプログラミングの学びに大いに活用できるであろう。

千葉県流山市での教育プロジェクトへの参画ら見えるプログラミング教育

千葉県流山市では『流山市GIGAスクール構想』を掲げており、包括連携協定を結ぶ東京理科大学と先進的な統合型プログラミング教育の実施計画を策定した。

内田洋行は流山市の全小中学校における「toio」の導入、教科横断的なカリキュラムおよび指導案の開発、オリジナル教材開発を通して、小学校・中学校の9年間を対象とする先進的な統合型プログラミング教育をサポートしている。これに、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが機材や技術面で参画している。東京理科大学の大学生も授業支援を行うなど産官学連携のプロジェクトとして、取り組んでいる。

同計画は9年間の一貫した教育の中で、学年や教科を横断した情報教育ができるカリキュラム設定となっていることが特徴で、足利氏も「プログラミング教育の基礎を身に着け、『人工知能を活用できる人材』を育成していくことが可能になると感じています」と話す。

プログラミング教育の未来と自由研究

今回、10万人突破企画の【大人の自由研究】チームの3人で内田洋行を訪問して取材を敢行したが、メンバー全員がプログラミング教育の現状がこれほどまで進んでいるとは知らず、驚きがあった。

ChatGPTに代表される人工知能の民主化も追い風となり、ますます個人のテクノロジーに対するスキルが求められている時代になってきているのではないだろうか。そうした中で、プログラミング教育が必須化されている現状を見ると、IT人材の需要がさらに高まっていくと考えられる。

プログラミング教育が必須ではなかった筆者らにとっても、プログラミング教育の最前線を知ることができて大いに刺激であった。今後の世の中に求められていくスキルも数年の間に変化を求められる状況になりそうだ。

今井理央

2022年にマイナビへ新卒入社。入社から現在まで、TECH+での広告施策・リードジェネレーションのソリューション営業を担当。10万人突破記念企画プロジェクトにおいては、大人の自由研究企画をメインに携わっており、記事の執筆は本企画が初となる。「ITとテクノロジーの可能性」について日々勉強中。趣味はカフェ巡りとお散歩。