NTTグループの企業を中心にシステムインテグレーションなどのサービスを提供し、グループ CIO 補佐の役割を担うエヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(以下、NTTコムウェア)。同社はマイクロソフトの Surface Pro / Surface Hub を活用し、働き方改革の推進に力を入れています。

その際に目指したのが、3F から 3A へと働き方をシフトすることです。3F とは「決まった場所で、決まった時に、決まったツールで」進める従来の働き方のことで、同社は「どこでも、いつでも、どんなツールでも」という 3A の働き方への変革を実現しました。

  • Surfaceで3Fから3Aに働き方をシフト

    3F から 3A へと働き方をシフト(『コミュニケーション基盤』活用推進のための社内向けキャッチコピー)

サービスが成長して仮想マシンベースのシステムに課題が見つかる

2018 年から順次整備を始めた全社員向けの Surface Pro の配備は、2020 年 3 月で完了。ちょうどその時期に始まった新型コロナウイルスの影響による在宅勤務にすんなりと移行できています。政府の緊急事態宣言解除後もリモートワークで存在感を示し続ける Surface Pro / Surface Hub。その導入に至るまでの経緯と成果について、プロジェクトに尽力した経営企画部およびネットワーククラウド事業本部の担当者のみなさんに話を伺いました。

  • NTT品川TWINSアネックスビル 1 階で Surface Hub 2 を活用したリモートでのインタビュー風景

    NTT品川TWINSアネックスビル 1 階で Surface Hub 2 を活用したリモートでのインタビュー風景

働き方改革から始まったコミュニケーション基盤整備施策

NTTコムウェアは、2020 年 3 月末までにSurface Pro 約 4,000台、Surface Pro 7 約 3,000台の計約 7,000 台を導入し、全社員への配備を済ませました。

そもそも同社では働き方改革に向けて業務改革や意識改革を図るため、2017 年 10 月に「コミュニケーション基盤の整備」の推進を意思決定し、経営企画部主導で導入および活用推進の施策を進めていました。Surface 導入以前の同社では、各社員の自席に固定のシンクライアント端末を設置していました。フリーアドレスの推進は環境的に難しかったといいます。

また、一部社員は在宅勤務を始めていたものの、カメラやマイクを搭載しないシンクライアント用のホワイト PC を家に持ち帰って使用する状況で、社内との連絡手段もメールと電話しかありませんでした。会議を行うためリモートワークの社員の動きを社内から確認するにも、電話をかけるかメールを送るかしなければならなかったといいます。

働き方改革を推進する観点から、こうした状況を変え、リモートワークでもオフィス内と同様の仕事ができる環境を用意しようという施策が「コミュニケーション基盤整備」の取り組みのひとつです。この取り組みの一環として、今回の Surface 導入を進めてきました。意思決定にあたっては、当然ですがまだ端末を Surface だけに限定していたわけではありません。経営企画部 経営品質部門 社内システム担当 スペシャリストの岡本 直也 氏は当時をこう振り返ります。

NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 サービスオペレーション部 基盤OP BU 基盤OP担当 スペシャリスト岡本 直也 氏

NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 サービスオペレーション部 基盤OP BU 基盤OP担当 スペシャリスト岡本 直也 氏

「全社導入に先駆け、まずは在宅勤務で使う社員や、営業で持ち歩く社員をターゲットに、ポータブルな端末を選定しようという計画でした。条件は、業務に支障なく使える端末であることに加え、営業担当が現場でプレゼンに活用しやすいように、タブレットの導入も求められていました。また、運用面ではマスター作成、キッティングおよび問い合わせ対応のコスト低減を目的に、パソコンとタブレット端末の 2 機種に分けるのではなく、両方の要素が 1 機種に統合されたツーインワンの形が望ましいということも要件に挙げました」(岡本 氏)。

さらには、NTTグループのセキュリティ要件として ID・パスワード認証ともう一つをプラスした 2 要素認証にすることも必須でした。同社ではそれまでカード認証を用いていましたが、持ち運びする端末に導入するとポータブル性を損ないます。「指紋、静脈など他の認証方式を比較検証したところ、顔認証に優位性があるという結論に至り、2018 年 4 月に 4 機種の候補から Surface Pro を選定しました。」と岡本 氏は語ります。

Surface Pro の全社配布でコロナ時の在宅勤務にスムーズに移行

Surface Pro を選んだ理由はほかにもあったと、同部門 社内システム担当 スペシャリストの新屋 純一 氏は話します。

NTTコムウェア株式会社 経営企画部 経営品質部門 社内システム担当 スペシャリスト 新屋 純一 氏

NTTコムウェア株式会社 経営企画部 経営品質部門 社内システム担当 スペシャリスト 新屋 純一 氏

「社員にアンケートやヒアリングを行ったところ、とくに社外でプレゼンを行う営業部門から、ITツールを提案する立場として説得力を増すため、見た目のうえでも相手の目を引くカッコいい端末がほしいという声が多く出ていたのです。また、それまでの端末はバッテリーの持ちが短いという不満の声もありました。これらを含む課題に対して検討を行い、新しい端末の選定に臨んだ経緯があります」(新屋 氏)。

Surface Pro の導入は 2018 年秋、まず営業部門を中心に 500 台のトライアル配布からスタートし、年が明けた 2019 年 1 月からの 3 カ月で 2,000 台以上が追加されます。この時点で一気に導入が進んだのですが、とはいえ当初は「Surface の利便性をよく把握した社員が積極的に活用する」レベルにとどまり、全社的に活発に活用する状況ではなかったといいます。新屋 氏はこう指摘します。

「コロナ禍の前は、Surface を使った働き方をイメージできていない社員が多く、在宅勤務制度を利用している(したことがある)社員の割合も 2 割程度にとどまっていました。単純にこれまでのワークスタイルと変わらず、オフィスの自席に行って仕事をするなら Surface は不要なのでは、という声もあったほどです。全社をキャラバンしてメリットや使い方を説明しても、利用者がなかなか増えていかない状況で、どう増やしていくかが課題でした」(新屋 氏)。

そこに政府の緊急事態宣言が出たことで、在宅勤務で仕事のコミュニケーションが必要な状況になり、Surface で業務を行う中で、Microsoft 365 のさまざまな機能と連携した Surface の便利さに気づいていきます。「もちろんそれも、全社員への Surface Pro 導入が完了していたからこそ円滑にリモート移行できたわけです。緊急事態宣言解除後も在宅勤務中心の働き方を継続していますが、時折出社する際も、社内でソーシャルディスタンスを確保するため、自然とフリーアドレスも浸透しつつあります」と新屋 氏は付け加えました。

  • 「働き方改革推進」の一環として 9 月にオープンした本社 1 階、「ParkLabo.」にて

    「働き方改革推進」の一環として 9 月にオープンした本社 1 階、「ParkLabo.」にて

セキュリティを堅固にしながらリモートで使いやすい環境を実現

NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 サービスプロバイダ部 MSP-BU IT Business Support担当 山下 武史 氏

NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 サービスプロバイダ部 MSP-BU IT Business Support担当 山下 武史 氏

Surface Pro の全社導入においては、ネットワーククラウド事業本部の活躍も欠かせないエピソードです。ネットワーククラウド事業本部 サービスプロバイダ部でキッティングを担当した山下 武史 氏は、NTT グループの厳格なセキュリティ環境の中、技術企画部の情報セキュリティ部門とも調整しながらキッティングの設計を進める作業が大変だったと振り返ります。

「Surface Pro もあくまでシンクライアント端末として利用することが必要で、端末自体にデータはほぼ残らないわけですが、それでもセキュリティポリシーに則り USB からのデータ流出の対策など細かなところを作り込んでいきました。今回は Microsoft System Center Configuration Manager(SCCM)を活用し、リモートでのアップデート作業など運用面での利便性も考慮しながらセキュリティを固めていったので、極めて堅固でありながら、社員にとっても活用しやすい仕組みが作れたと思います」(山下 氏)。

NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 サービスプロバイダ部 MSP-BU IT Business Support担当 担当課長 栗田 恭宏 氏

NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 サービスプロバイダ部 MSP-BU IT Business Support担当 担当課長 栗田 恭宏 氏

山下 氏の設計に基づき、Surface のキッティングから最終的に全社に配備するところまでを担った同担当課長の栗田 恭宏 氏は、キッティング時のエピソードを付け加えます。

「社内はネットワークセキュリティが厳しいため、そのまま実施すると 1 台あたりのキッティングに長時間かかってしまいます。そのうえ台数が多いので、今回はセキュリティ部門に相談し、キッティング専用のネットワークを用意してもらって、地域の支社でも分担して進めました。導入の最初の時点では、2019 年 1 月からの 3 カ月で 2,000 台を一気にキッティングし、2 月には急きょ 700 台の追加も発生したのですが、結果として効率的に実施できたと思います。また、一緒に働くパートナー企業向けにも、リモートワークを効率的かつセキュアに行ってもらうために Surface Pro を 1,700 台配布しましたが、こちらも特に混乱なく実施できました」(栗田 氏)。

Surface Hub で変わる会議、ノウハウを今後の展開に活かす

Surface Pro の配布を全社的に進める中で、社員から、Surface Pro や Microsoft 365 と相性のよい会議用システムがほしいという要望が出てきました。「検討を進める中、やはり Microsoft のツールを使いこなすには Microsoft 製品がよいという話になり、Surface Hub の導入が決まりました」(岡本 氏)。

まず Surface Hub を 5 台、さらに現在は Surface Hub 2S を 15 台追加し、遠隔地との打ち合わせやホワイトボード機能を使ったブレインストーミングなどに活用しています。会社役員による経営戦略会議でも利用していますが、リモート参加する役員がいる中、Surface Hub で資料共有しながら会議を円滑に進められるようになったと高い評価を得ています。

「実際に使ってみると、広い会議室でもクリアに聞こえますし、マイクも音声をしっかり拾ってくれるので、10 人程度の質疑応答にも効果を発揮しています。Surface Hub 2S では映像もさらにきれいになりましたね」(岡本 氏)。

「Office の各機能や OneDrive との連携が当然スムーズですから、Surface Hub を導入してよかったという声を各所で聞いています」(新屋 氏)。

Surface Pro に加えて Surface Hub も導入したことで、リモートワークを切り口にした同社の働き方改革が順調に進み始めたと、今回の導入プロジェクトでリーダー役を務めた経営企画部 経営品質部門 社内システム担当課長の臼田 亨 氏は評価します。

NTTコムウェア株式会社 経営企画部 経営品質部門 社内システム担当 担当課長 臼田 亨 氏

NTTコムウェア株式会社 経営企画部 経営品質部門 社内システム担当 担当課長 臼田 亨 氏

「ツールの導入が完了したので、これからは本格的な活用のフェーズに入ります。在宅勤務やリモートワークですぐにコミュニケーションを取れるようになったことは大きな成果ですし、従来は手続きや準備がかなり面倒だったリモート会議も今はあっという間に始められるようになり、柔軟性が高くなりました。Surface の導入が、今後に向けて職場環境が大きく変わるきっかけになったことは間違いありません」(臼田 氏)。

現在は Surface での Skype 使用回数と出張削減の相関を定量的に把握し、活用推進の指標として利用しているといいます。6 月時点の調査では、もちろんコロナによる外出自粛の影響は多分にあるものの、Skype を活用してコミュニケーションをとる社員が大幅に増え、一方で出張回数とそれに伴うコストは大きく減ったという定量的効果が出ています。

2020 年 9 月、NTTコムウェアは品川に創造のための空間「ParkLabo.」をオープンしました。Surface Hub 2S も活用できるように整備され、お客様、ビジネスパートナーおよび社員のコミュニケーションの場としての活用が進みます。

  • 2020 年 9 月 15日に竣工した、創造のための空間「ParkLabo.」。Surface Pro / Surface Hub 2S を活用し、コミュニケーションが広がる

    2020 年 9 月 15日に竣工した、創造のための空間「ParkLabo.」。Surface Pro / Surface Hub 2S を活用し、コミュニケーションが広がる

最後に、臼田氏はこう締めくくりました。

「今後は Surface や Microsoft 365 の使用状況を可視化し、働き方改革の一層の推進に加えて、業務生産性の向上にも活用していく考えです。展望としては、グループ各社への貢献はもちろんのこと、獲得したノウハウを活かしてグループ以外のお客様にサービスを提供する可能性も視野に入ってくるでしょう」(臼田 氏)。

  • 左から、NTTコムウェア 臼田 氏・山下 氏・栗田 氏・新屋 氏・岡本 氏

    左から、NTTコムウェア 臼田 氏・山下 氏・栗田 氏・新屋 氏・岡本 氏

*所属部署、役職等については、取材当時のものです。

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