相続するなどして手に入れた資産のなかでも、農地は特に扱いに困る人が多い資産といわれています。遠方に住んでいて農地として利用することもできず、どうすれば良いものかとお悩みではありませんか?
使う予定のない農地があるなら売却して手放すことをおすすめします。農地をそのまま放置すると、所有しているだけでさまざまなデメリットを抱えることになるので、資産価値がある早いうちに売却するほうが得策です。
本記事では、農地の売却方法について基礎から詳しく解説します。農地の売却で気になる税金や、その特別控除、相続時の注意点についても説明します。
農地の売却は難しいって本当?
農地は通常の土地とは異なり、農業従事者や農業に参入する者以外には売却できないという決まりがあります。食糧を生産する農業を守る保護目的から、農地法によって厳しい制限があり、誰でも自由に売買できないことになっています。
農地は、次のような場所を指します。
- 稲作に使っている水田
- フルーツなどを生産している果樹園
- 野菜などを栽培している畑
- 酪農家が牧草を育てている土地
また、農業委員会や都道府県知事の許可を得ることで売却や転用も行えますが、その手続きも簡単とは言い切れません。そのため、通常の土地売却に比べると農地を売却することは比較的難しいということを念頭に置いておきましょう。
農地を放置する3つのデメリット
所有する農地を放置するとどのようなデメリットがあるのでしょうか。ここでは大きくわけて3つのデメリットをご紹介します。
- 固定資産税がかかる
- 税負担が増える
- 農地として再利用できなくなる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
固定資産税を毎年支払う必要がある
農地に限られたことではありませんが、所有する不動産には毎年固定資産税がかかります。固定資産税は毎年1月1日の所有者に対して納税の義務が課せられ、たとえ使用していなくても所有しているだけで毎年税金を負担しなくてはなりません。
固定資産税は、固定資産税評価額に税率(本則1.4%)をかけて計算します。その税額の基準となる評価額は、土地の持つ資産価値を評価したものです。農地に関してはその土地で得られる収益も評価に含められるため、通常の住宅といった税額を求めるよりも計算が複雑になりやすく、高額になることもあります。
以下の手順で農地の固定資産税を求めましょう。
- 農地の種類を調べる
- 負担調整率を求める
- 固定資産税評価額から計算する
農地の種類を調べる
収益を評価基準に含めるという考え方から、農地は生産緑地・特定市街化区域農地・一般市街化区域農地・一般農地の4つに分けられ、それぞれ別の評価方法が設けられています。自分の土地がどの種類に当てはまるか見てみましょう。
農地の種類 | 特徴 | 評価方法 |
生産緑地 | ・環境保全、農林漁業に適した土地 ・500㎡以上 ・指定から30年間は転用禁止 |
農地評価※1 |
特定市街化区域農地 | ・首都圏、中部圏、近畿圏の特定市街化区域にある ・将来宅地になると見込まれている |
宅地並評価※2(評価額の3分の1に課税) |
一般市街化区域農地 | ・特定市街化区域以外の農地 ・10年以内に市街化を図る |
宅地並評価(評価額の3分の1に課税) |
一般農地 | ・上記に当てはまらない ・農地として利用される |
農地評価 |
参考:農林水産省「固定資産税の負担調整措置」
※
1)農地利用を目的として評価したもの
2)農地を近隣の宅地の売買価格を基準として評価し、その価格から宅地として転用する際にかかる費用を差し引いた価格
負担調整率を求める
農地の固定資産税は、評価額が急激に上がることを避けるため、負担調整措置が取られています。具体的には、通常評価額と税率をかけて計算するところ、農地の場合は負担調整率としてその土地ごとの率をかけあわせて計算することとされています。
負担調整率の基準となる負担水準は、次のように求められます。
負担調整率は以下の通りです。
負担水準の区分 | 負担調整率 |
0.9以上のもの | 1.025 |
0.8以上0.9未満のもの | 1.05 |
0.7以上0.8未満のもの | 1.075 |
0.7未満のもの | 1.1 |
“参考:農林水産省「固定資産税の負担調整措置」(2021年2月時点)”
固定資産税評価額から計算する
農地の種類別に以下の式に当てはめると固定資産税額を求めることができます。
耕作されていないと通常より税の負担は増える
ここ数年で、耕作されず空き地になっているような土地の課税を強化する動きがみられました。耕作されていない農地が増えていることを懸念して、平成29年の税制改定により、限界収益修正率の調整が撤廃されたのです。
限界収益修正率とはその土地で期待される年間利益の割合のことをいい、従来は調整によって課税評価額が55%まで減額されていました。しかし、それが撤廃されたことで、耕作をしていない耕作放棄地や遊休農地は本則の税額を納めることになり、負担が大きくなりました。
農業委員会と農地中間管理機構との協議によって認められるか、所有者に勧告することで遊休農地の対象となります。対象になると、通常の1.8倍もの固定資産税を納めることになってしまい、所有者にとって非常に大きな負担となるでしょう。
以下の記事では、耕作放棄地や遊休農地について詳しく紹介していますので参考にしてください。

農地として再利用できなくなる
長い間利用せず放置された農地は、再び農地として活用できない恐れがあります。長時間の放置で生じる問題は、単に雑草が生えて処理が大変になるだけでなく、そこに害虫や害獣が住み着くなどして土地が荒れ、土地としての価値が落ちることにあります。
また、管理されていない土地には不法投棄の問題も起こりやすく、不法投棄による火災が発生したり、環境を汚したとして近隣トラブルに発展したり、再利用のための撤去費用が大きくかかったりといった弊害もあるでしょう。
再利用だけでなく、売却するとしても土地が管理されてきれいなほうが買い手が付きやすい傾向があります。トラブルなく手放すためにも、できるだけ早く売却の決断をすべきでしょう。
農地のまま土地を売却する流れ
続いては、農地を売却する方法について解説します。農地の売却は、農地のまま売却する方法と土地を別の用途に転用してから売却する方法の2種類に分けることができます。
この章ではまず、農地のままの売却する流れを見ていきましょう。
- 農地の相場を調べる
- 売却先を探す
- 売買契約を結ぶ
- 農地委員会へ許可申請をする
- 農地の仮登記をする
- 売却の精算・本登記をする
売却する農地の相場を調べる
農地を売却するなら、まず自分の農地がどれほどの価格で売却できるのかを知っておくと大きなアドバンテージになります。農地の売却相場は以下のような方法で調べましょう。
- 不動産ポータルサイトで調べる
- 一括査定サイトを利用する
農地を扱っている不動産ポータルサイトなら、同じエリアの土地の売り出し価格を確認して相場を測ることができます。また、一括査定サイトを利用すると、複数の不動産会社に査定を依頼し、結果を比較することで相場が調べられるでしょう。
農地売却の相場として、全国農業会議所の平成30年の調査による全国のエリア別の農地価格を記載しましたので参考になさってください。
地域 | 中田平均価格(千円/10a) | 中畑平均価格(千円/10a) |
全国 | 1,182 | 872 |
北海道 | 247 | 117 |
東北 | 572 | 343 |
関東 | 1,521 | 1,630 |
東海 | 2,283 | 2,062 |
北信 | 1,359 | 931 |
近畿 | 1,968 | 1,404 |
中国 | 746 | 439 |
四国 | 1,726 | 952 |
九州 | 874 | 593 |
沖縄 | 890 | 1,288 |
“参考:全国農業会議所「平成30年田畑売買価格等に関する調査結果(要旨)」”
また、一括査定サービスを利用するなら、次のような優良企業を厳選したサイトを選ぶと安心です。
次の記事では、おすすめの不動産査定サービスをランキング形式で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

3つの方法で売却先を探す
土地を売却するには、その土地を有効に活用してくれる買い手を見つける必要があります。農地の買い手を探す主な方法は以下の3つです。
- 農業委員会に相談する
- 農地集積バンクを利用する
- 不動産会社に仲介を依頼する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
農地がある最寄りの農業委員会に相談
農地を売却したいなら、まずはその土地の農業委員会に相談することから始めましょう。売却が許可されれば、農地を求めている農家を紹介してもらえる可能性もあります。
そもそも農地を売却するには、農業委員会に許可を取らなければなりません。農業委員会は各市町村ごとに設置された行政委員会のことをいい、農地に関する業務を幅広く請け負っています。
日本の農業は、農業人口の減少や町の市街地化が進むにつれて低迷傾向にあります。農地がむやみやたらに売却され、都市部だけが拡大すると、人が住みにくくなったり、災害時のリスクが大きくなったりするので、農地の売却は慎重にならざるを得ません。こういった考えから、農地の売却には農業委員会の許可が必須です。
農地集積バンクを利用する
農地集積バンクは、各市町村が窓口となり、分散した農地をまとめて購入したい大規模農家に売却したり、貸し出したりする手助けをおこなう制度です。農地の所有者と借主・利用者をマッチングさせ、成約したら賃料や協力金を受け取るような仕組みになっています。
手放したい農地がある市町村に問い合わせ、制度が利用できるかどうか相談すると良いでしょう。
地域の不動産会社に仲介を依頼
農地であっても、他の土地と同じように不動産会社に仲介を依頼して売却活動をすることもできます。ただし、住宅の売却に優れているような不動産会社に頼んだとしても、期待するような結果にならない恐れがあります。農地を売却するなら、農地の売却実績がある不動産会社を選びましょう。
過去の売却実績は不動産ポータルサイトなどで確認することができます。農地は特に地域性の強い不動産なので、その地域に根差した不動産会社だと安心です。一括査定サービスなどを活用して、複数社に査定を依頼し、比較すると良いでしょう。
大手だけでなく中小・特化型の不動産会社の特徴などを紹介したこちらの記事もチェックしてみてください。

農地を売却したいなら一括査定サイト「イエウール」がおすすめ
農地の売却を検討している人に編集部がおすすめしたい一括査定サービスが「イエウール」です。イエウールがおすすめな理由について、以下にまとめています。
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見つかった買主と売買契約を結ぶ
買主が見つかったら売買契約を結び、成約を完了します。農業委員会の許可は売買契約を締結後に申請することも珍しくありません。売却の許可を得るのが難しい農地でも、明確な買主とその目的を説明することができれば農業委員会の許可が得られる可能性が高くなります。
ただし、買主が農地の運用をしないと見なされたり、資金が不足していると判断されたりすると許可が得られず、せっかく結んだ売買契約を解消されてしまう恐れもあります。買主とのトラブルを避けるには、売買契約を結ぶ際、農業委員会への申請を控えていることをしっかり説明しておくと良いでしょう。
農地委員会へ許可申請をする
売買契約を結んだら、農地委員会に売却の許可申請をしに赴きましょう。申請が通らなければせっかく買主を見つけても売却することはできません。許可が得られるようできる限りの準備をしておきましょう。
農地売却の許可が得られやすい条件は次の通りです。
- 資金に余裕がある
- 売却プランに具体性がある
- 堅実な買主がいる
以上のような点をアピールすることができれば、売却の許可が得られることが多いです。農業委員会は農地の保全を目的とした組織であるので、農地が維持されることが伝わるようにきちんと説明すると良いでしょう。
また、許可申請に必要な書類は以下の通りです。
- 位置図
- 付近見取図
- 土地の登記事項証明書
- 公図の写し
- 法人調書(買主が法人の場合)
- 営農計画書
- 耕作証明書
- 契約書の写し
- 農地等権利移動許可申請書
農地の所有権移転請求権の仮登記をする
売買契約を締結したら、登記の仮申請をおこなうことができます。事前に仮登記を済ませておくと後の登記処理が簡単になるだけでなく、売却の明確な意思表示として買主の安心にもつながります。
仮登記には、農地の固定資産税評価額の1%の登録免許税がかかります。また、登記の仮申請は司法書士に代行を依頼することもでき、その場合には司法書士報酬もかかるので注意しましょう。
仮登記に必要な書類は以下の通りです。
- 売主の印鑑証明書
- 登記原因証明情報(売買契約書)
- 固定資産税評価証明書
売却の精算をして農地の本登記
農地委員会の審査によって売却の許可が得られたら、そこでようやく正式な売買の精算をおこなうことができます。買主から代金の受け取りをして、土地を引き渡して終了です。引き渡しは所有権移転登記の本登記をもって完了とされ、仮登記と同様に司法書士に代行を依頼することが一般的です。
農地の場合、本登記に農業委員会から交付される許可証の提示を求められることがあります。引き渡し時に持参するようにしましょう。
農地を転用して売却するなら
農地売却のもうひとつの方法として、農地以外の使い方をする土地として売却するという方法があります。このように転用することで、農地を必要としていない人にも需要が広がり、早く売却先が見つかる可能性が高くなるでしょう。
この章では、農地を転用して売却する場合に知っておきたい項目をご説明します。
農地の転用とは
農地転用とは、農地を宅地・店舗・道路など、農業以外の使い方ができるようにすることをいいます。土地はそれぞれその用途が登録されていて、農業以外の用途で土地を使うにはその登録を変更しなければなりません。
国の農業保護政策により、農地として登録された土地をそれ以外の用途で使用することは禁止されています。そのため、農地の売却に農業委員会の許可が必要だったように、農地を転用するには都道府県知事や指定市町村の長の許可が必要です。
転用の許可申請の方法についてこの後詳しく解説しています。
土地活用の方法に迷っているなら「HOME4U土地活用」がおすすめ
農地を転用するメリット
農地を転用して売却すると、条件によって以下のようなメリットを得られる可能性があります。
- 固定資産税が安くなる
- 相続税対策になる
- 農地よりも収益性が高くなる
固定資産税が安くなることは農地転用の最大のメリットといえるでしょう。固定資産税には居住用の土地に関して、税額が最大1/6になる優遇措置があり、条件によっては転用すると税金の負担が軽減されます。
農地はニーズが限られ、収益にも限度がありますが、転用して住宅用地や事業用地、駐車場にすると収益性を高めることができます。収益性が高い土地のほうが買主が早く見つかり、売却がよりスムーズになるでしょう。
農地を転用するデメリット
反対にデメリットとしては次のようなものが考えられます。
- 簡単には農地に戻せない
- 初期投資金が必要になることもある
放置した土地をもう一度再生して農地として利用することが難しいように、一度農地から転用すると、再び農地として利用することは難しいです。農地として売却できるなら、そのまま売却したほうが良い場合もあります。収益性が高いからと安易に考えず、専門家に相談しながらおこなうなど、転用は慎重に進めましょう。
また、農地から転用するには多額の初期費用が必要になることも多いです。土壌の整備から始まって、さまざまな手順を踏んで少しずつ新たな土地として生まれ変わらせなければなりません。その費用は所有者負担であり、ある程度資金がなければ転用は難しいでしょう。
転用できる農地の条件
転用の許可を得るには、農地が以下のような条件を満たす必要があります。
- 第2種農地または第3種農地に当てはまる土地であること
- 一般基準を満たすこと
第2種農地とは、生産力の低い未整備の土地や市街地として発展が見込める農地のことをいい、第3種農地は市街地化の傾向が顕著な土地にある農地のことをいいます。
一般基準は所有者の預貯金残高や資金状況、登記情報、位置図などから見た、農地転用がふさわしいかどうかの判断基準のことです。転用ができる資金が十分にあるかどうか、周辺農地への影響はどうかというように多方面から総合的に精査して判断されます。
一方、転用が認められない土地は以下のような条件を満たす農地です。
- 農用地区域内用地
- 甲種農地
- 第1種農地
市町村によって農用地区として定められている土地にある農地は、転用することが難しいです。また、農地として運用することが有効であるとされる甲種農地や第1種農地も転用することが困難とされています。ただし、転用後も農業用の施設などに使用される場合に限って転用が許可されることもあります。
農地の転用方法は場所や広さで変わる
農地転用をおこなうなら、まずはしっかりと計画を練り、都道府県知事や指定市町村の長の許可を得ることから始めます。転用許可の申請方法は農地の場所や広さによって異なるため、自分の農地がどれに当てはまるか確認しておきましょう。
市街化区域内の農地転用
市街化区域内の農地に関しては、営農条件が良い甲種農地でない限りは原則許可が得られます。手続きの一般的な流れは次の通りです。
- 農地転用届出書を自治体から入手する
- 農地転用届出書の記入、必要書類の用意
- 提出
- 自治体による審査
- 受理書が交付される
審査には一週間程度要します。農地転用届出書の他に、登記事項証明書・案内図・公図などが必要になります。
30a以下の農地の転用
市街化区域内の農地以外に関しては、農業委員会を通じて申請書を提出する必要があります。ただし、その土地が30a以下か30aを超えるかによって許可の流れが変わるので注意しましょう。まずは30a以下の農地の転用許可申請の流れをご説明します。
- 申請書を農業委員会に提出
- 農業委員会から都道府県知事等に意見を付して送付
- 都道府県知事等から許可・不許可の通知が届く
許可申請書と一緒に以下の書類が必要になることもあります。
- 法人にあっては、法人の登記事項証明書及び定款又は寄付行為の写し
- 土地の位置を示す地図及び土地の登記事項証明書(全部事項証明書に限る。)
- 申請に係る土地に設置しようとする建物その他の施設及びこれらの施設を利用するため必要な道路、用排水施設その他の施設の位置を明らかにした図面
- 資金計画に基づいて事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面
- 申請に係る農地を転用する行為の妨げとなる権利を有する者がある場合には、その同意があったことを証する書面
- 申請土地が土地改良区の地区内にある場合には、その土地改良区の意見書
- その他参考となる書類
“引用:農林水産省「農地転用許可の手続について」(2021年2月時点)”
30aを超える農地の転用
30aを超える農地に関しては以下のような手続きの流れをたどります。
- 申請書を農業委員会に提出する
- 農業委員会と都道府県農業委員会ネットワーク機構で意見共有
- 農業委員会から都道府県知事等に意見を付して送付
- 4haを超える農地については農林水産大臣とも協議をおこなう
- 都道府県知事等から許可・不許可の通知が届く
申請者の提出先や必要書類など、大まかな流れは30a以下の農地の転用許可手続きと同様ですが、農業委員会は都道府県農業委員会ネットワーク機構に意見聴取をおこない連携することで、許可すべきかをより慎重に協議します。また、都道府県知事もその意見を受け、4haを超える農地は農林水産大臣と協議をおこなうなど、さらに審査が厳しくなっていることがわかります。
相続した農地の売却には名義変更が必要
相続した農地を売却する際、法律上の義務はないものの売主をはっきりとさせるために、登記簿謄本の名義変更が必要です。名義変更には、次の3つの種類があります。
名義変更の種類 | 内容 |
遺言による変更 | 遺言書に基づき農地を受け継ぐ人に名義変更 |
遺産分割協議による変更 | 相続人同士で話し合い、農地を受け継ぐ人を決定し名義変更(相続人全員の同意が必要) |
法定相続による変更 | 法定相続割合の共有状態で名義変更(共有者全員の同意が必要) |
また、農地を相続した場合、被相続人の死亡を知った時点から10ヶ月以内に農業委員会への届出も必要です。その際には、相続したことを確認できる書面が求められます。
相続した土地の名義変更や売却手順を詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。


農地の売却にかかる費用とは
農地転用にかかる初期費用など、農地の売却にはある程度まとまった資金を用意しておく必要があります。では、実際に農地を売却するとき、どれほどの費用が必要になるでしょうか。売却方法別に必要な費用を見ていきましょう。
不動産会社の仲介で売却したときの費用
不動産会社に仲介を依頼して売却すると、比較的高い価格での売却が期待できます。しかし、不動産会社に対して報酬として仲介手数料を支払う必要があるなど、独自の出費も多くなります。項目ごとに費用の相場をまとめました。
必要な費用の種類 | 内容 | 相場 |
仲介手数料 | 不動産会社への成功報酬 |
|
抵当権抹消登記費用 | ローンが残っていた場合の登録免許税 |
|
測量費用 | 境界が明確でない場合に必要 |
|
印紙税 | 売買契約書に貼り付ける収入印紙代 |
|
所有権移転登記費用 | 土地の所有権を買主に移転するときの登録免許税 |
|
このほかにも、場合によっては司法書士報酬といった費用がかかることもあります。ゆとりある計画を心がけましょう。以下の記事では、仲介で売却したときの費用について詳しく紹介しています。

農地の転用にかかる費用
農地転用をした場合、転用・造成するために次のような費用がプラスでかかります。ここでは、農地を宅地に転用した場合にかかる費用を例にあげてご紹介します。
必要な費用の種類 | 内容 | 相場 |
農地転用手続き費用 | 届け出、申請の費用 |
|
土地改良区域除外決済金 | 土地改良区の組合員の負担に対して支払う |
|
行政書士費用 | 農地転用申請書類の整備を依頼した場合 |
|
宅地造成工事 | 農地を宅地にする造成工事費用 |
|
水道引き込み費用 | 新たに上下水道を引き込む工事費用 |
|
登記費用 | 農地転用工事後の変更登記の費用 |
|
“参考:BLUEHOUSE「農地を宅地にするには?愛知の農地転用の費用と手続きは?」”
農地を売却して利益があるなら譲渡所得税
農地を売却し収益が発生した場合、収益額によって譲渡所得税を支払わなければなりません。そこで注意したいのは、売却が成立した価格がそのまま課税対象になるのではなく、そこから諸費用を差し引いた価格に課税されるという点です。譲渡所得税の課税対象のことを譲渡所得といい、以下のように求められます。
ここでいう取得費とは、その農地を購入する際にかかった費用のことです。相続で手に入れた農地の場合、条件によってはその相続税も取得費に含めて計算できます。譲渡費用は売却時にかかった諸経費のことです。
譲渡所得税の税率は、どれほどの期間にわたって農地を所有していたかによって以下のように異なります。
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 復興特別所得税 |
5年以下(短期譲渡所得) | 30% | 9% | 2.1% |
5年を超える(長期譲渡所得) | 15% | 5% |
相続した土地売却の税金についてより詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。

取得費と譲渡費用に含まれるもの
実際に支払っていた費用でも、取得費や譲渡費用として計上できないものもあります。農地売却にあたってどのような費用が計上できるのか、主な例を次の表にまとめました。
取得費 | 譲渡費用 |
|
|
“参考元:国税庁「取得費となるもの」「譲渡費用となるもの」(2021年2月時点)”
売却方法によって最大5000万円の特別控除
農地を売却した際にかかる譲渡所得税に対し、売却方法によっては特別控除が適用できます。適用されれば、課税対象である譲渡所得額が減額され、節税につながるので、自分の農地が当てはまるかどうかぜひ確認してください。
- 800万円の特別控除
・農用地区域内の農地を農地集積バンクや農業委員会のあっせんなどで譲渡した場合
・農用地区域内の農地を農地中間管理機構や農地利用集積円滑化団体に譲渡した場合 - 1,500万円の特別控除
・農用地区域内の農地を買入協議によって農地中間管理機構に譲渡した場合 - 5,000万円の特別控除
・農地が土地収用法等により買い取られる場合
農地売却に必要な税金や節税対策の詳細を知りたい方は、以下の記事がおすすめです。

農地売却以外のおすすめの活用方法
相続などで手に入れた農地を売却するのではなく、活用して収入を得る方法もあります。また、農地転用せずに農地のままでも活用できる方法もいくつかあります。農地のまま活用する方法と農地転用した場合の活用方法は、以下の通りです。
活用方法のタイプ | 詳細 |
農地のまま活用する方法 |
|
農地転用した場合の活用方法 |
|
「土地活用に興味がないわけではない」「副業として収入源を確保したい」という方は、こうした活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。以下の記事では、農地の活用方法について詳しく説明しています。

転用して活用する場合は、土地活用の種類をランキングで紹介しているこちらの記事をご参考ください。

まとめ
農地は数ある不動産のなかでも、税額計算から売却方法まで複雑な面が多く、苦労やトラブルが起こりやすい不動産です。面倒だからといって放置すると、荒れて利用や売却が難しくなったり、近隣トラブルに発展したりする恐れがあります。利用する予定がないなら、早めの売却をおすすめします。
しかし、コストをかけたくないあまり急いで売却しようとすると、手続きの不備が起きたり、申請が得られなかったりと、想定よりも時間や手間がかかることにもなりかねません。それほど農地の売却は複雑で難しいのです。
ひとつひとつのステップを着実に進めていくことが農地売却の成功への近道です。売却方法によっては特別控除を適用でき、節税対策も可能です。わからないことがあったときには周りの農家や専門家に相談しながら、慎重に農地売却を進めていきましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
・https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf
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