介護の現場でAIを活用し、人手不足や作業の効率化を支援する動きが広まっている。

2021年3月17日~19日にかけて東京ビッグサイト 青海展示棟で開催されている、介護に関するテクノロジーソリューションの展示会「東京ケアウィーク`21」にてウェルモはケアプランの作成をAIで支援するソリューション「ミルモぷらん」の紹介を行っている。

同サービスは3月17日から発売が開始された新ソリューションだ。

数万件のケアプランを学習済みのAI

ケアプランは、介護を必要とする利用者の現在の状況や希望をふまえ、介護サービスの提供内容や、支援方針などをまとめた介護計画書のことで、居宅介護支援事業所の場合はケアマネジャーが作成を担当する。

作成を行う中で、ケアマネジャーの知識や経験によって内容や作成時間に差が出てしまうことや、利用者の状況に合わせたケア事例、疾患について本で調べるなどの情報収集に時間がかかってしまうことが課題としてあったという。

同ソリューションは、アセスメントデータ(利用者の現在の状況などのデータ)を入力すると、数万件のアセスメントデータとケアプランを学習済みのAIが、アセスメントの疾患情報から利用者に必要だと考えられる医療知識やケアのポイントを表示する「専門知識の補助」と蓄積されたデータから必要な文章候補を複数提示する「文章の作成」の機能でケアプランを作成するケアマネジャーを補助するものとなっている。

100人以上のケアマネジャーからの評価段階を経て製品化されたとのことで、操作画面ひとつをとっても、現場の声を取り入れた工夫がなされているという。

  • アセスメントデータの入力画面

    アセスメントデータの入力画面。今まで手書きやエクセルなどで管理をしており、「入力が保存できているか不安になる」という声を取り入れ、入力が終わると一項目ずつ「保存しました」の文言が表示される仕様となっている

アセスメントデータの入力が終了すると、すぐにAIが項目ごとに複数の文章候補を提示する。

  • 第二表作成

    ケアプランの第二表作成をAIが支援している場面。項目にカーソルを合わせると、AIが提案する複数の文言を見ることができる

アセスメント情報から、予想される疾患や注意点などをAIが提案するため必要な医療知識を得ることができる点や、幅広い視点からAIが提案を行うため、視点の漏れをなくすことでケアマネジャーの経験の差を埋めることにつながるという。

同社は、介護に正解はなく、百人いれば百通りのプランができるとしており、同サービスはケアプランの作成そのものを行うものではなく、ケアマネジャーのアシスタントという位置づけだとしている。

ケアプランの作成時間が40%減という結果も

同社では、2019年12月にケアマネジャー39名を対象に、同ソリューションを活用する場合/活用しない場合の2パターンでケアプランを作成し、所要時間の計測や事後アンケートを取得する実証実験を行った。

結果として同ソリューションを使用した場合、作成時間が使用しない場合と比べて35%~40%削減されるという結果が出たほか、アンケートでは、82.1%のケアマネジャーが「情報収集の負担軽減になった」と答えたほか、93.1%が「経験年数が浅いケアマネジャーが新たな知識や気づきを得られる」と答えたという。

実証実験での結果を踏まえ、満を持してリリースされた同ソリューションは、2021年夏ごろには同社が提供している地域ケア情報の検索サイト「MILMO net」との連携を予定しており、連携によって利用者の状況にあった事業所の検索補助など「サービス資源情報の提案」機能が追加される予定だという。

  • ウェルモ展示の様子

    ウェルモの東京ケアウィーク`21での展示の様子