矢野経済研究所は、高耐圧パワー半導体を搭載した車載用パワーモジュール市場について、2021年はxEV(ハイブリット車(HV)および電気自動車(EV))の市場拡大により、メーカー出荷金額ベースで前年比43.1%増となる2656億9200万円となる見込みであること、ならびに引き続き成長が続き、2025年には6000億円、2030年には1兆円を超える規模へと市場が拡大するとの予測を公表した。

最大市場はSiパワー半導体を実装するパワーモジュールで、その市場規模は前年比39.3%増の2150億3600万円と予想され、特に、Eアクスル(主機モータとインバータ、減速機を一体化した電動駆動システム)向けの需要が伸びているという。

一方、Teslaのモデル3から採用が始まったSiCパワー半導体を適用したパワーモジュール市場は同61.4%増の506億5600万円と予想され、2022年以降も欧州の自動車メーカー(OEM)を中心に搭載が進み、本格的に市場が立ち上がると見ている。また、EVの普及により、2030年までに、SiCパワーモジュールの出荷額がSiパワーモジュールの出荷額を超えると予想されるともしている。

  • 車載用パワーモジュール市場

    車載用パワーモジュールの基板材料(Si、SiC)別出荷額の推移予測 (出所:矢野経済研究所)

SiCパワーモジュールの中心はハイエンドEVの800Vシステム

SiCパワーモジュールの特徴は、Si比で小型・薄型化と低損失化の両立が実現できることである。このため、2022年から2025年にかけて市場投入が活発化するハイエンドEVを中心に搭載車が拡大する見込みである。

その背景には、駆動モータの高出力化と、車内空間を広く取るためにEアクスルの小型化ニーズがある。また、ハイエンドEVでは航続距離を延ばすために大容量バッテリを搭載しており、高効率化と充電時間短縮のために800Vシステムが進展しており、その対応のために耐圧1200Vのパワー半導体が必要になり、SiCでの対応を後押しする要因となるともしている。

2030年、SiCがSiを追い抜く車載用パワーモジュール市場

なお、車載用パワーモジュール市場は、欧州や中国が中心となってxEVの販売台数の伸びが期待され、ミドルエンドEVのSUVやハイエンドEVにおいては、フロント/リアにEアクスルが配置され、パワーモジュールの搭載数も一台あたり2個必要になることから市場規模を押し上げることとなるという。そのため2025年の市場規模は6354億7400万円となり、内訳としてSiパワーモジュールが4552億8600万円、SiCパワーモジュールが1801億8800万円となるとしている。

また、2025年に向けて150mm(6インチ)SiCウェハによる量産が本格化し、SiCパワー半導体のコストダウンが進むことから、2026年以降のEVへのSiCパワーモジュールの採用検討を進めている自動車メーカーが増加していることもあり、800Vだけでなく従来型の400Vシステムの需要拡大も期待できるため、2026年以降、車載用SiCパワーモジュールの本格的な普及期に入り、2030年の市場規模は5642億2800万円に到達。既存のSiパワーモジュール市場と併せて、1兆338億円まで拡大すると予測している。