昨年の新型コロナウイルス感染拡大の第1波に感染して回復した人のほとんどが、1年後も感染を防ぐ量の中和抗体を保持していた、と横浜市立大学の研究グループが20日発表した。同グループは同じ対象者で半年後の保持率も調べている。1年後の保持率は半年後よりわずかに下がっていたものの、ほとんどの人が1年は中和抗体を持つことを示した研究として注目される。ワクチン接種によってもほぼ同期間の保持が期待できるという。

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    新型コロナウイルス(従来株)の電子顕微鏡画像(NIAID提供)

横浜市立大学学術院医学群の山中竹春教授や梁明秀教授、後藤温教授らの研究グループは、昨年2月から5月までに新型コロナウイルスの従来株に感染し、その後回復して約1年経過した20~70歳代合わせて250人の血液を採取。独自に開発した精度の高い抗ウイルス抗体検出方式「hiVNTシステム」を使って中和抗体が体内に残っているか調査した。

その結果、無症状・軽症だった人(182人)の中和抗体の保持率は96%(半年後は97%)、中等症・重症の人(68人)は100%(同100%)だった。

研究グループはまた、人工的に作製した英国型などの変異ウイルスを使って、変異株に対する中和抗体保持率をhiVNTシステムで解析した。英国型の保持率は、無症状・軽症では79%、中等症、重症ではそれぞれ98%、95%だった。

これらの結果から山中教授らは、従来株に感染していてもその後に広まった変異株に対する中和抗体を持つ人の割合は下がる傾向にあり、従来株の感染歴があってもワクチン接種はした方が良いとの見方を示している。

研究グループは今後も同じ対象者について中和抗体がどの程度まで保持されるかを調べる方針だ。

横浜市立大学の今回の調査結果は、ワクチンによる中和抗体の産生と一定期間の保持に期待を持たせる内容だ。研究グル-プが発表した同じ20日の夜、厚生労働省の専門部会は、米モデルナ製と英アストラゼネカ製の2種類の新型コロナウイルスワクチンの製造販売を承認することを了承した。同省はこれを受け、承認を決めた。

国内では既に米ファイザー製のワクチンが承認され、医療従事者や65歳以上の高齢者への接種が進んでいる。新たに2種類が承認されたことで、国が契約した3種類のワクチンが全て使えるようになる。モデルナ製ワクチンは東京都や大阪府で計画されている大規模接種センターなどにおける接種で使われる予定だ。

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    山中竹春教授(横浜市立大学医学部臨床統計学教室提供)

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