静岡大学は4月15日、若返り効果で注目されている化合物「ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)」を生産する乳酸菌を発見したと発表した。

同成果は、静岡大 学術院工学領域の吉田信行准教授らの研究チームと、静岡大 グリーン科学技術研究所、大阪ソーダとの共同研究によるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

NMNは、ワシントン大学の今井眞一郎教授らの研究において、生後2年のマウス(ヒト年齢で約60歳に相当)に1週間投与すると、生後6か月(ヒト年齢約20歳に相当)の運動能力、外観を示すまで若返った、と報告されたことで知られるようになった化合物で、現在では、その抗老化メカニズムは科学的に証明されるに至っているほか、抗老化作用だけでなく、免疫力の向上や、アルツハイマー病・パーキンソン症の改善効果についての報告もなされるようになっている。

そのためNMNはニュートラシューティカル(健康維持に有用な、科学的根拠を持つ食品・飲料のこと)として注目され、現在では含有するサプリメントが複数発売されるようになっているが、工業的に効率よく生産する手法がないため、いずれもかなり高価なものとなってしまっている。

吉田准教授率いる研究チームは、新しい反応を触媒する微生物や酵素を自然界から見つけ出して、産業応用に結び付けようという研究を行ってきており、今回、NMNの高効率な微生物生産プロセスの構築を目指し、同化合物を生産する乳酸菌の探索を行ったという。

乳酸菌をターゲットとした理由は、安全であることと、そのまま菌体を製剤とすることができ、NMNのニュートラシューティカルズ効果と共に、乳酸菌のプロバイオティクス効果も期待できるからだとしている。

今回の研究では、NMNを生産する乳酸菌を効率よく探索するため、以下の3点の工夫がなされたとする。

  1. 菌体の中よりも外に分泌したNMNを検出する方が都合がよい
  2. NMNは構造上、細胞膜透過性が悪いことが予想されたことから、NMNからリン酸基を除去した化合物「ニコチンアミドリボシド」(NR)を生産するものを見つける(NRもNMNと同様の効果があることが報告されている)
  3. NRがないと生育しないような酵母(NR要求性酵母)を使用したバイオアッセイ系を構築する

まず、NR要求性酵母に乳酸菌174株をそれぞれ接種する形で、NR要求性酵母の生育の可能性の探索が実施され、そこから3株の候補株が得られたという。

  • NMN

    (左上)NR生産乳酸菌のスクリーニング方法。(左下)乳酸菌候補株の顕微鏡写真。(右)フルクトースが添加されると、菌体内にNMNを蓄積することが確認された (出所:静岡大学Webサイト)

その3株は、いずれも花によく生息しており、フルクトース(果糖)を要求することが知られている「フルクトバシラス属」と同定され、フルクトースを添加することで、各候補株の生育がよくなることも確認されたという。

なお、これらの候補乳酸菌は菌体外にNMN(およびNR)を分泌するが、フルクトースを添加すると菌体内に蓄積することが確認されたことから、当初の目的の1つである、乳酸菌製剤としての応用が可能であることが示されたとする。ただし、現在のNMNの生産量は、培地1リットル当たり数mgであり、工業生産のためにはさらなる生産性の向上が望まれることから、さまざまな検討を進めているとする。また、乳酸菌候補株のうち1株のゲノム(全遺伝子)を解読したところ、候補株がなぜNMNを生産できるのかがわかってきたとしており、その特徴はほかの微生物にはないものであるため、基礎微生物学的にも興味ある知見だともしている。