岡山大学は12月23日、発達した大アゴを持つ昆虫「オオツノコクヌストモドキ」を用いて、オスの大アゴのサイズと天敵に襲われたときに示す「死んだふり行動」の関係を調査した結果、大アゴサイズが大きなオスほど、死んだふり行道をより高頻度に行うことが明らかとなったと発表した。

同成果は、香川大学農学部の松村健太郎研究員、岡山大大学院 環境生命科学研究科の宮竹貴久教授および岡山大農学部生(弓瀬滉太さん(4年)、藤井結さん(3年)、林冬馬さん(3年)らの共同研究チームによるもの。詳細は、英国王立協会の国際雑誌「Biology Letters」に掲載された。

自然界には、カブトムシなどの昆虫から、ゾウなどの大型哺乳類まで、さまざまな動物のオスがツノやキバやツメといった発達した武器を備え、しばしばメスを巡って同種のオス同士での闘争にも用いられることが知られている。オスの武器はサイズの大きな方が闘争に勝利しやすいとされている。

その一方で、サイズの大きな武器は捕食者などの天敵からも目立つため、死亡リスクを増加させてしまうことも考えられていた。メスを勝ち取るためのせっかくの武器であっても、生存面でマイナスに働いてしまえば、結局は子孫を残しにくいということになる。しかし、武器のサイズが大きなオスが淘汰されていないということは、天敵に捕食されてしまうことを回避できる何らかの戦略を持っていることが考えられるというわけだ。

だが、これまでそれを検証した研究はなかったという。そこで研究チームは今回、小型昆虫のオオツノコクヌストモドキを対象として、オスの大アゴのサイズと死んだふり行道の関係の調査を実施した。

  • 死んだふり

    (a)オオツノコクヌストモドキのオス。全長4mmほどの害虫である。(b)オオツノコクヌストモドキの大アゴのサイズと死んだふり頻度の関係 (出所:岡山大プレスリリースPDF)

オオツノコクヌストモドキはコメ・小麦類の貯穀害虫として知られた小型昆虫だ。体長は4mmほどしかないが、その体格においては発達したクワガタムシのような大アゴを持ち、それを武器としてメスを巡ってオス同士が戦うという生態を有する。また小麦粉で容易に飼育できることから、多くの固体を使って行動の観察することが可能であり、研究用途として有用だ。

今回の研究では、オオツノコクヌストモドキに対して捕食者からの攻撃を模した外部刺激を与える形で観察が行われた。すると、大アゴのサイズと死んだふり行道の頻度の関係は正の相関であることが明らかとなった。つまり、大アゴのサイズが大きなオスほど、死んだふり行動をより高頻度に行うことが判明したのである。

さらに、オオツノコクヌストモドキを、その天敵であるハエトリグモ(Hasarius adansoni)に実際に出会わせるとどう反応するかという実験も行われた。すると、死んだふりをするオスは生き残り、死んだふりをしないオスは死亡することが明らかとなった。こうした結果から、武器サイズの大きなオスは、天敵と遭遇しても死んだふりをすることで、死亡リスクを下げるような戦術を持つことが示唆されるとした。

今回の研究成果により、大きな武器を発達させたオスは、敵から逃げるための死んだふり戦術もセットで進化させていることが明らかとなった。オスはケンカに強いだけではなく、天敵から上手く逃れる術を持つことも重要だということである。

研究チームは今回の成果に対し、生存にとってコストといえる大きな武器を持つに至った生物の工夫は、生物の生存戦略を考える上でのヒントとなることが期待されるとしている。