岡山大学は12月17日、家庭での受動喫煙にさらされている期間が10年以上の大学生は、家庭での受動喫煙の経験がない大学生と比較して、約1.5倍むし歯になりやすいことを明らかにしたと発表した。

同成果は、岡山大学病院予防歯科の佐保輝医員、同大学大学院 医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野の森田学教授、同大学保健管理センターの岩﨑良章教授らの研究チームによるもの。詳細は、スイスの学術雑誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載された。

2020年4月から多くの施設で屋内は原則的に禁煙となり、未成年者の喫煙エリアへの立ち入りが禁止された。しかし家庭内までは現状では強制できないため、未成年者が受動喫煙にさらされる可能性が依然として続いている。

これまでの調査により、家庭での受動喫煙にさらされている子どもの歯(乳歯)がむし歯になりやすいことはすでに判明している。しかし、大人の歯(永久歯)が生えそろった若者を対象とし、家庭での長期間の受動喫煙にさらされている状態に注目した調査は、これまであまり行われていなかった。

共同研究チームは今回、大学生を対象とし、家庭において「受動喫煙にさらされている期間が10年以上」と「受動喫煙の経験がない」の2種類に分類し、むし歯のなりやすさに関しての調査を実施した。すると、受動喫煙に10年以上さらされている大学生は、受動喫煙の経験がない大学生と比べ、むし歯に約1.5倍なりやすいことが明らかとなった。

喫煙は喫煙者本人だけでなく、副流煙を受動喫煙させられる周囲の人の身体にも確実に害を与える。とはいえ、職場や公共の場などでの禁煙・分煙は進んでいるものの、家庭内まで強制するのは難しい。しかし、大事な家族を、まして子どもの健康を実際に害しているということが事実であれば、喫煙者自身が喫煙の仕方を考える必要がでてくるだろう。

共同研究チームは今回の調査結果に対し、家庭での禁煙を推進することの意義を強調するものになったとしている。また、共同研究チームの論文の主著者である佐保医員は、現在喫煙中の方は禁煙に向かって、そうでない方もどのようにしたら受動喫煙にさらしてしまうリスクを減らせるか、今一度考えてみてほしいとコメントしている。

  • 受動喫煙

    大学生を対象に、受動喫煙にさらされている期間が10年以上の人と、受動喫煙経験のない人でむし歯のなりやすさを比較。受動喫煙経験10年以上の大学生は、そうでない大学生の約1.5倍むし歯になりやすいことが判明した (出所:岡山大Webサイト)