職場でスマホ撮影の経験がある人は71.5%。会議メモや紙資料、製品・設備まで、「撮る」という行為はすでに日常業務の一部です。ところが、飲み会での撮影を「許せる」とした人が43.9%いる一方、その写真や動画をSNSに投稿することを許せる人は20.3%まで下がります(23.6ポイントの大差)。

同じ1枚でも、「撮る」と「見せる」の間には無視できない段差があるようです。ビジネスパーソン492人への調査から、その境界線がどこに引かれているのかを探りました。

【調査概要】

  • 調査対象:マイナビニュース会員のビジネスパーソン 492人
  • 調査期間:2026年6月23日~7月20日
  • 調査方法:インターネットアンケート
  • 属性分布:20~39歳 190人、40~59歳 302人

「メモ代わりに1枚」 - 職場の撮影は、もう特別ではない

まず押さえておきたいのは、職場でスマホのカメラを向けること自体が、すでに特別な行為ではなくなっているという事実です。今回の調査(有効回答492人)において、勤務先で写真や動画を撮った経験が「ある」と答えた人は71.5%(352人)にのぼりました。

  • 職場でスマホを使って、写真や動画を撮影した経験、回答結果グラフ
職場でスマホを使って、写真や動画を撮影した経験はありますか?(n=492)
日常的にある 26.6% 71.5%
たまにある 38.0%
1〜2回だけある 6.9%
ない 28.5%

7割以上が経験者という水準は、「一部の人がやっている特殊なこと」ではなく「多くの人にとっての当たり前」の域に入っています。手帳やメモ帳を取り出す感覚で、スマホのカメラアプリを起動する――そんな光景は、もはやどのオフィスでも珍しくないと言えるでしょう。

問題は、この日常化した「撮る」という行為が、その先にある「見せる(投稿する)」まで地続きに捉えられているかどうかです。この記事では、撮影という入口から、SNS投稿という出口まで、ビジネスパーソンがどこに線を引いているのかを順に見ていきます。

会議メモから設備まで、仕事で「何を」撮っている?

では、撮影経験者(352人)は具体的に何を撮っているのでしょうか。複数回答で尋ねたところ、上位は業務に直結するものが並びました。

  • 職場で撮影したことがあるもの、回答結果グラフ
職場で撮影したことがあるものは?(複数選択可)
ホワイトボード・会議メモ 42.6%
製品・設備・作業現場 41.5%
名刺・紙資料 38.9%
PC・スマホの画面 34.7%
飲み会・懇親会 31.8%

会議の板書や配布資料、現場の記録――上位は業務に紐づく被写体であり、スマホのカメラが「仕事を記録する道具」として定着している様子がうかがえます。静止画だけでなく動画で手順や状態を記録する場面も含まれるでしょう。いずれも「その場で書き写す代わりにスマホで残す」という、効率化の延長線上にある使い方です。

とはいえ、撮ること自体が受け入れられているからといって、その先の「見せる」まで同じ感覚で許容されているとは限りません。

「撮る」は日常、「投稿」は慎重 - 許容度に生じる段差

ここからが本題です。さまざまな撮影・公開行為について「許せると思うか」を尋ねると(複数回答)、「撮る」から「投稿する」に至る境目で数字がはっきりと落ちます。

最も許容されたのは「飲み会・懇親会で写真を撮る」で43.9%でした。ところが、同じ飲み会の写真を「SNSに投稿する」となると20.3%まで下がります。撮影と投稿の間には、23.6ポイントもの落差があります。

さらに「社内風景・デスクをSNS投稿」は12.0%、「業務チャット画面をSNS投稿」「社内セルフィーを背景に配慮せずSNS投稿」はともに7.5%にとどまりました。

  • スマホ撮影・SNS投稿を許容できると答えた割合、回答結果グラフ
スマホ撮影・SNS投稿のうち許容できる行動は?(複数選択可)
飲み会・懇親会で写真を撮る 43.9%
飲み会写真をSNS投稿 20.3%
社内風景・デスクをSNS投稿 12.0%
業務チャット画面をSNS投稿 7.5%
社内セルフィー無配慮でSNS投稿 7.5%
あてはまるものはない 33.9%

撮ることには寛容でも、それを外に公開する段になると、多くの人がブレーキを踏みます。この段差こそが本調査の核心です。なお、この調査結果はあくまで「回答者がどこまで許せると感じるか」という許容意識であり、客観的な安全基準を示すものではない点に留意が必要です

境界線の引き方は人それぞれです。まず、そもそも「撮ること」自体を認めない立場があります。

「職場で写真を撮ることは、当社ではアウトだと思う」(44歳、銀行、営業関連)

一方で、撮ることは認めつつ、「投稿」との間に明確な線を引く人もいます

「撮るのは自由だと思うが、投稿は基本的にNGでは?」(37歳、食品、その他技術職)

さらに、状況次第では投稿まで許容するという立場もあります。

「常識的に問題がなければ良いと思います」(57歳、建設・土木、建築・土木関連技術職)

「撮ることもアウト」「撮るのはよいが投稿はアウト」「常識の範囲ならよい」――同じ職場での撮影・投稿でも、どこに線を引くかは人によって、また職場によって大きく異なります。

SNS投稿は他人事ではない - 撮影経験者の42.0%が「経験あり」

「投稿には慎重」という意識がある一方で、では実際に投稿した経験のある人はどれくらいいるのでしょうか。撮影経験者(352人)のうち、職場に関する写真や動画を個人のSNSに投稿した経験が「ある」と答えた人は42.0%(148人)でした。

職場の写真や動画を個人のSNSに投稿した経験はありますか?(n=352)
日常的にある 11.9% 42.0%
たまにある 18.8%
1〜2回だけある 11.4%
ない 58.0%

つまり、撮った人のうち4割超が、実際に「見せる」ところまで進んでいる計算になります。SNS投稿はごく一部の例外ではなく、身近に起こりうる行為と言えます。

自由回答には、何げない投稿が職場との接点を持った体験も寄せられました。

「一人で残業している写真をSNSに載せたら、会社の人に見られた」(35歳、総合商社、事務・企画・経営関連)

ここまでの調査結果から、職場でのスマホ撮影は日常化する一方、SNS投稿にはより慎重な意識が向けられていることがわかりました。アウトとセーフの境界線を「どこに引くか」、今回の調査データをさらに深掘りすると、世代による差異も見えてきそうです。

アウト・セーフの境界線、年代で「置き場所」が違う?

境界線の引き方を年代で比べると、いくつかの項目で無視できない差が現れました。ここでは回答者を20-30代(190人)と40-50代(302人)の2群に分けて比較します。

最も対照的だったのは「あてはまるものはない(=どれも許容しない)」を選んだ割合です。20-30代が24.2%だったのに対し、40-50代は40.1%と、15.9ポイント上回りました。上の世代ほど「撮影も投稿も許容しない」と構える傾向が読み取れます。

個別の行為でも差が出ました。「飲み会や懇親会の写真をSNSに投稿」は20-30代の25.3%に対し40-50代は17.2%(8.1ポイント差)、「社内セルフィーを背景を気にせずSNSに投稿」は10.5%対5.6%(4.9ポイント差)。いずれも若い層の許容度がやや高くなっています。

  • 許容できる行動を20-30代(n=190)と40-50代(n=302)で比較したグラフ
許容できるスマホ撮影・SNS投稿行動の年代別比較
20-30代
(n=190)
40-50代
(n=352)
あてはまるものはない 24.2% 40.1%
飲み会写真をSNS投稿 25.3% 17.2%
社内セルフィー無配慮投稿 10.5% 5.6%

ただし、これを「若者は無防備、年配は慎重」と単純化するのは早計です。あくまで本調査における傾向差であり、個人差のほうがはるかに大きいと考えられます。実際、データの傾向とは逆の声も双方の世代から聞かれました。

「そもそも社内内部の様子をSNSにアップすること自体が信じられない」(29歳、通信関連、IT関連技術職)

20代であっても、社内の様子を外に出すこと自体に抵抗を覚える人はいます。逆に上の世代でも、自分なりに問題ないと考えて撮影・投稿する人がいます。

「気をつけて撮影、投稿しているので、問題があったことはありません」(50歳、生命保険・損害保険、営業関連)

職場の写真・動画、「撮る」と「見せる」は別の判断

「撮る」と「見せる」の境界線は、単に「仕事の写真か、私生活の写真か」だけでは引けません。誰が写っているのか、何が背景に入っているのか、誰に共有されるのかによっても判断は変わります。

「現場写真や名刺の情報をチーム内で共有することはあるが、私的利用としては当たり前にNG。飲み会の写真をSNSにあげるのは個人的には問題ないが、嫌な人もいるのでフォロワー以外は顔を隠すか、そもそも載せない。またはその場で許可を取ります」(30歳、サービス〈その他〉、事務・企画・経営関連)

自由回答には事故の一歩手前で踏みとどまった声も多く並びました。

「職場の自分の席周りの風景を投稿しようとした時に、たまたま会社の重要情報が載っている書類が写っていた。投稿寸前で気づいて止めたが、思わずヒヤリとした」(57歳、サービス(その他)、IT関連技術職)

「会社のパスを首に下げたまま写真を撮っている人がいて、拡大すると(情報が)知られてしまうのではとヒヤリとしました」(50歳、インターネット関連、営業関連)

「撮る」はすでに日常となりましたが、「見せる」はその延長ではなく、別の判断を必要とする行為です。71.5%の人がスマホで職場を撮り、そのうち4割の人がSNSに投稿する時代においては、会社のルール整備だけでなく、個人の見識も問われています。