AMDは10月27日、Xilinxを買収することで合意したと発表した

この10月27日は元々AMDの第3四半期の決算に関するConference Callが開催予定とされており、実際にConference Callでは決算発表とXilinx買収の両方について説明と質疑応答が行われた。

さて、まず買収のスキームについて。買収は株式交換の形で実施される。株価そのもので言えば、Xilinxの方はAMDによる買収の話が出てくる直前の10月8日の時点で106ドルほど。その10月8日にWall Street Journalなどが一斉にAMDによる買収を報じた(例えばこれ)結果として同社の株価は120ドルほどに高騰した。一方のAMDは概ね80ドル前後を推移しており、このあたりを勘案してか買収ではXilinx1株をAMDの1.7234株と交換という形になっている。これでAMDによる買収総額はおおよそ350億ドル。買収が成立すると、旧AMDの株主は合併後の新会社の株をおよそ74%ほど保有(残りは旧Xilinx株主が保有)ということになる。

AMDの第3四半期の売り上げは、新記録の28億ドル(昨年同時期比で56%アップ)、粗利44%と力強いものであるが、Xilinxもまた第2四半期(6月27日~9月26日)に7億6700万ドルの売り上げを上げており、粗利率はさらに高い71%弱である。現実問題として両社の提供するポートフォリオには重複が無く、しかも補完し合える関係にあるため、合併の効果が非常に大きいとしている。

実際合併すれば、売り上げは四半期で30億ドルを超える事になり、年商100億ドルの規模に膨れ上がる事になる。またこの他の財務上のメリットとして、向こう18か月以内で3億ドルほどの経費削減になるほか、両社のR&D費用の合計は27億ドルに達することになり、さらに従業員の数も13000人になる計算である。

今回の買収に関し、AMDのLisa Su CEOは、Xilinxとはもともと友好的なパートナーとして長く一緒に仕事をしてきており、特にサーバーマーケットに関してはAMDのEPYCとXilinxのFPGAやAdaptive SoCを組み合わせて効果的なソリューションを提供してきているとしたうえで、今回の買収によりこうしたソリューションの提供がより効果的に行えるようになるとしている。XilinxのVictor Peng CEOもまた、我々は企業文化が近く、合併によって高性能なAdaptive Computing Platformをより効果的に提供できるようになる、としている。

ちなみに合併が成立した場合、Xilinxは独立する子会社の様なユニットになり、そのユニットの社長にPeng氏が就任することになる。またPeng氏ほか2人のXilinxのDirectorが、AMDの取締役会に参加することになるとされている。買収完了は、各国の司法当局による承認を経て、2021年末までに完了の予定となっている。

というあたりが公式の発表およびConference Callの内容であるが、ちょっとだけ解説をしておきたい。

今回の動きは、

  • IntelがXeon+FPGAというソリューションを前面に出してきており、これに対抗するためにもXilinxを(他の会社に買収される前に)入手したかった。
  • 規模を広げてゆかないと他社に買収されるという資本の論理からも、それなりの売り上げをもつ企業を買収して、せめてトップ10に入る規模にしたかった。
  • RyzenやEPYC、Radeonに加えてPS5やXbox Series X/Sの出荷開始などで大幅に売り上げが増え、これに応じて株価も過去最高レベルに達している。この株価の状況であれば、大規模買収を行うための資金調達もしやすい(実際には株式交換なので資金は必要ないが、ただあまりこちらの株価が安いと交換レートがひどいことになり、買収が成立しにくい)。

といった複雑な要因が絡んだものと思われる。2つ目の話で言えば、今年前半の半導体売上高ランキングトップ10にNVIDIAが入っているのにAMDが入っていない、というのはちょっと象徴的であり、このあたりを改善してゆかないとIntelはもとよりNVIDIAとも戦うのが難しくなってゆく、というあたりを勘案したものだろう。

個人的に言えば、基本的には非常に筋の良い買収だとは思うのだが、これまでIntelのプラットフォームにXilinxのFPGAを載せてソリューションを提供していたOEMパートナーは、多分青い顔になるだろうな、というあたりだろうか。IntelのFPGAに載せ替えるのは大変だし、その一方でプラットフォームをAMDに変えるというのもこれまでのビジネスを考えると難しい。なかなか難しい状況に立たされることになったOEMパートナーに同情を禁じ得ない。