小惑星探査機「はやぶさ2」が12月6日未明に地球に帰還する計画が固まった、と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が14日発表した。小惑星「りゅうぐう」の試料が入ったとみられるカプセルを機体から分離し、オーストラリアに落下させる。その後、はやぶさ2は別の天体へ向かう見込みだ。

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    地球に帰還しカプセルを切り離した「はやぶさ2」の想像図(JAXA提供)

はやぶさ2は現在、地球から9200万キロの位置を秒速23.9キロで航行中。JAXAが同日明らかにした計画では、加速用のイオンエンジン(電気推進エンジン)を8月中旬ごろまで連続運転した後、9月中旬に軌道修正を実施。10月からは「最終誘導フェーズ」に入り、別のエンジンを使った軌道修正や微調整を4回行って地球に近づいていく。続いてカプセルをオーストラリア南部のウーメラ砂漠に向けて分離する。

カプセルは大気圏に突入後、カプセルを熱から守る「ヒートシールド」を外してパラシュートを開き、発信器を作動しながら着地。これを地上のアンテナや航空機などを使って発見し、回収して100時間ほどで日本に持ち帰る。JAXAはオーストラリア側にカプセルの着陸許可を申請中で、回収作業は同国国防省や米航空宇宙局(NASA)の支援を受ける。

はやぶさ2はカプセル分離後に地球から離れる軌道変更を行い、残りの燃料を使ってさらに別の天体に向かう見込みだ。2010年に帰還した初代「はやぶさ」にも同じ計画があったものの、トラブルが相次いだことを受け、さらなる航行を断念。「はやぶさ」はカプセルと同時に大気圏に突入し、 ウーメラ砂漠付近の上空で燃え尽きている。カプセルは砂漠で回収された。

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    はやぶさ2の地球帰還計画(JAXA提供)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、カプセル回収チームは当初の計画より減員するという。オンラインで会見した中澤暁(さとる)サブマネージャは「カプセル回収の確実性に影響があってはならないため、後方支援のメンバーを減らすことにした」と説明した。

津田雄一プロジェクトマネージャは「あと半年弱。長い旅の終着点がみえてきた。一歩一歩着実に進んでいる実感がある。地球帰還には精密さが要求されるが、はやぶさ2の集大成であり確実にやっていきたい。皆さんに、りゅうぐうのかけらをお見せできることを願っている」と述べた。

はやぶさ2は2014年12月に地球を出発し、18年6月から昨年11月までりゅうぐうに滞在。2回の着地で、地表と地下の試料を採取できたとみられている。往復の航行実績は49億2000万キロに達し、残すところあと3億2000万キロとなった。

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