BFTでは何を確認しているのか?

H3ロケット第1段のBFTは、全8回実施する計画。H3ロケットの3種類の形態では、LE-9エンジンが2基の場合と3基の場合があるため、まずは2019年1月より、前半シリーズとして2基による燃焼試験を行い、その後3基に増やしてから、同年6月~8月に後半シリーズを実施する予定となっている。

  • BFTの予定

    BFTの予定。今後、形態を2基から3基に変更して、後半シリーズを行う (C)MHI

今回公開されたのは、前半シリーズの最後となる4回目の試験。この4回はすべて違う条件で行っていて、それぞれで確認していることも異なる。1回目は20秒という短い時間で、始動時の特性を見る。2回目は燃焼時間を38秒に延ばし、推力のスロットリングを実施。3回目はジンバルも動かす、という具合だ。

今回の4回目は前半シリーズの最後ということで、仕上げ的な意味を持つ。推力のスロットリングとジンバルの制御に加え、タンク圧が減少していく点まで模擬していて、今までの中で最もフライト条件に近い試験であると言える。

  • 前半シリーズの4回

    前半シリーズの4回。試験の条件は、このようにそれぞれで異なっている (C)MHI

BFTの状況について、MHI側のプロジェクトマネージャである奈良登喜雄氏は、「1回目はいろんなことが初めてだったので苦労したが、なんとかうまくできた。そのあとはほぼ予定通りで、確認すべき事項は確認できたと考えている」とコメント。順調に進んでいることをアピールした。

  • 奈良登喜雄

    MHIの奈良登喜雄プロジェクトマネージャ

そして4回目の試験は、4月12日の14時に実施。燃焼時間は44秒間とほぼ計画通りで、試験を無事完了することができたとのこと。今回使われたエンジンは実機型(EM)の「#3」と「#4」だったが、今後、種子島から「#1-2」を運び込み、3基による後半シリーズに移行することとなる。

BFTのズーム動画。隙間から燃焼ガスが見える

BFTのワイド動画。噴煙が空高くまで登っていく

今回のBFTでは、推力は開始から20秒間はフルパワーで、そこから3分の2に落としているそうだが、筆者が撮影した上記の動画からは、その前後で違いはほとんど感じられない。ちなみにH3ロケットの第1段がフライト中に推力を下げるのは、機体が軽くなってくると、そのままの推力では加速が大きくなりすぎるからだ。

なおBFT取材では、安全のため見学場所はスタンドから700mほど離れており、エンジンを直接見ることはできないのだが、2回目と3回目のBFTを無人カメラで撮影した映像がJAXAとMHIから提供されているので、そちらも見るとよいだろう。至近距離からの映像なので、より大きな迫力が楽しめるはずだ。

100mほど離れた場所からの映像 (C)JAXA

1こちらはなんとスタンド内の映像だ (C)MHI