4月8日~10日にベルギー・ルーベンにて開催された第9回結晶シリコン太陽電池国際会議(International Symposium on Crystalline Silicon Photovoltaics:Silicon PV 2019)においてベルギーのナノテク研究機関imecは、中国の大手N型シリコン両面太陽電池およびモジュールメーカーであるJolywood(中来)と共同開発したn-PERT(Passivated Emitter and Rear Totally diffused:N型不動態化エミッタおよび裏面全拡散型)両面太陽電池で23.2%の前面変換効率を達成したことを明らかにした。

imecでは、n-PERTプロセスは費用対効果が高く、変換降率をさらに高める道筋として、n-PERT太陽電池の表面の変換効率に対する裏面の変換効率の比(=Bifaciality)を90%超、変換効率を23.5%超へと近日中に向上させるめどが立ったとしており、すでに普及しているp-PERC(Passivated Emitter and Rear Cell:P型不動体エミッタおよび裏面セル)技術にとって代わりうると判断している。

  • imecとJolywoodが協同開発した両面n-PERT太陽電池

    imecとJolywoodが協同開発した両面n-PERT太陽電池 (出所:imec)

imecによると、n-PERT技術は、金属不純物に対する感度が低く、光誘起劣化が無いためp-PERC技術より潜在的に費用対効果が高いという。また、前面グリッドはスクリーン印刷で形成し、裏面パッドははんだ付けで形成することで、セル当たりに使用する銀の量を80mg未満におさえることができ、製作コストの低減が図れるという。

imec/EnergyVille(imecが主導するベルギー・フランダース地方の太陽電池開発コンソーシアム)のプロジェクトリーダーであるLoic Tous氏は、「imecが以前に報告した結果と比較して、我々はスクリーン印刷を全面的に用いたn-PERT太陽電池の製作プロセスをさらに最適化し、12本のバスバーを持つ設計を採用した。これによりオープンサーキット電圧(Voc)は690mV以上、フィルファクタは最大83%を達成。これらの結果は、従来から業界で採用されている両面p-PERC太陽電池を製作する製造装置をそのまま用いて、ホウ素拡散工程を追加するだけで得ることができ、容易に代替可能だ」と述べている。

またJolywoodのR&DディレクターであるJia Chen氏は「imecとの研究パートナーシップにより、両面n型太陽電池の転換効率を短期間に24%を超えるまで高められると確信している」と述べている。

結びつきが強まるimecと中国企業

現在、米国のトランプ政権は、米国企業から技術盗用した容疑のJHICCのみならず、中国の半導体企業、研究機関、大学への米国製半導体製造装置輸出規制に踏み切ったことが報じられている。

こうした米国の動きから、中国勢は米国からの先端装置や技術情報の入手がますます困難になってきており、太陽電池技術や半導体技術といった先端科学技術分野について、imecをはじめとする欧州の研究機関や大学との協業という形で入手を図るケースが増えてきている。先端半導体プロセス技術開発で世界の最先端を走るimecにとって、研究資金の金づるである先端プロセス技術を必要とする半導体メーカーは減少の一途をたどっており、新たな研究資金源としての中国勢の存在は魅力的に映っているようで、ベルギー・中国の両企業は、共にwin-winの良好な関係が築けると判断しているようである。

そうした中、中国の李克強首相は4月9日、ベルギーの首都ブリュッセルで、EU首脳と会談し、中国およびEUが「世界の2大安定勢力」であり「世界の2大主要経済体」であることをお互い確認した上で、今後、中国とEUが様々な分野での協力をさらに強化していくことで合意している。李氏の訪欧は習近平国家主席の訪欧から半月足らずで実現しており、このような中国首脳の相次ぐ渡欧の背景には、米中貿易摩擦や米中ハイテク覇権争いの下で欧州勢を味方につなぎ留める狙いがあると見られる。EUは、米国およびそれに追従する日本のように、中Huawei製品を根拠なく一方的に締め出す政策をとってはいない。

欧州にとって中国は魅力ある巨大な市場であり、製品や技術の最大の売り込み先である。トランプ政権の諸政策が、結果的に中国とEUの結びつきを強めていると言えるかもしれない。日本では、自分たちの技術力を客観的に評価することもなく、「中国に技術を盗まれるな」という声が永田町や霞が関から聞こえてくるが、欧州政府および企業のスタンスは日本とは異なることに留意する必要があるだろう。

なお、次回の開催となる「Silicon PV 2020」は、初めて中国で開催されることが決まっており、ハイテク分野での中国勢の存在感はますます強まっていくことが予想される。