NTTコミュニケーションズ(NTT Com)と日本カーソリューションズ(NCS)は10月3日、ドライブレコーダーの映像およびセンサデータ(速度、加速度)に音声データを加え、NTT Comが開発したAI(マルチモーダル深層学習)が解析することで、交通事故における自動検知の精度向上に成功したと発表した。

NCSは、カーリースの契約企業に対して安全運転促進のための自動車IoTツールとして「NCSドライブドクター」を提供している。同サービスのオプションである「NCS交通安全プログラム」の映像解析サービスでは、ドライブレコーダーに記録した映像ビッグデータの中から専任スタッフが多様な危険運転シーンを抽出し分類を行っているが、多くの時間を要するなどの課題があり、手早く正確に行うことを求めていたという。

NTT Comは、2016年から車両向けマルチモーダル深層学習の開発に取り組んでおり、ドライブレコーダーデータの解析による危険運転(ヒヤリハット)の検知に成功した。

従来は映像やセンサデータのみを解析対象にしていたが、新たに交通事故発生時の接触音や人の声などの音声データを加えた車両向けマルチモーダル深層学習を開発し、従来は検知が困難だった交通事故についてもAI(人工知能)での自動検知を実現するために、両社でこれらのデータ解析に関する実験を開始した。

  • 実験の流れ

    実験の流れ

なお、今回の実験で使用したAIは、NTTグループのAI関連技術である「corevo(コレボ)」を利用している。

同実験では、車両や歩行者などと接触しそうになるシーンをヒヤリハット、接触したシーンを交通事故とする設定に基づき、NCSがユーザー企業に提供しているドライブレコーダーデータから、音声や映像、センサデータ「時系列マルチモーダルデータ」を約850件抽出した。そのうち7割にあたる約600件をAIに学習させた後、残り3割の約250件のデータをAIに判定させ解析を実施した。

  • 実験の判定イメージ

    実験の判定イメージ

ドライブレコーダーは車両の前方映像を記録するため、特に後方や横方向の状況ではヒヤリハットか、交通事故かの判別は従来は困難だったという。今回、新たに交通事故発生時の音声データを追加したことで、映像には映らない場所の状況も接触音などを含めて解析可能となり、その結果車両の全方位においてAIでの自動検知精度が向上したとしている。

音声、映像、センサデータを対象にした解析では映像、センサデータのみを対象にした解析と比べて、交通事故と判定した精度が約1.75倍の89%に通常運転、ヒヤリハット、交通事故の全体においても約1.2倍の85%と高い精度を記録したという。

両社は今後もAIを利用し、多様な危険運転や交通事故の検知・解析の精度を上げ実用化し、安全運転を推進していく。具体的には、NTT Comは同実験で確立した同事象を検知するアルゴリズムを、車両向けAI/IoTソリューションとしてユーザー企業に提供する。

NCSは、コンサルティング業務のためのヒヤリハット検知に、これまで開発したAIをすでに実利用している。同実験の成果により、新たに事故映像の分類やヒヤリハット検知の精度向上が見込めることから、今後はNCS交通安全プログラムを利用しているユーザー企業AIによる解析データを提供することで、コンサルティングサービスのレベル向上を目指す。