DMM.comは4月25日、同社と日本HP、リコージャパンの3社共同で新たに展開する「マスプロダクションサポートサービス」の説明と活用事例の紹介、および展示会を開催した。ここでは、同イベントの様子をレポートする。

DMM.make 3Dプリント部門部長・川岸孝輔氏

DMM.make 3Dプリント部門部長・川岸孝輔氏

イベントの冒頭では、DMM.comのDMM.make 3Dプリント部門部長・川岸孝輔氏が登壇し、新たに展開するマスプロダクションサポートサービスに関して説明した。DMM.makeは、初心者からハードウェアスタートアップの支援までカバーする、ものづくりの総合プラットフォームを目指したサービス。業務用3Dプリンタ「HP Jet Fusion 3D 4200 printer」を導入し、従来より10倍速く造形できるうえ、強度も向上し、最終製品の製造も可能となっている。

その核となる「DMM.make 3D PRINT」は、ユーザーがアップロードした3Dデータを造形する「3Dプリントサービス」、造形したものを販売する「クリエイターズマーケット」、初心者でも3DプリンタやUVプリンタなどでものづくりを体験できる「カンタンサービス」の3つが連動する形で構成され、現在29種もの素材・後処理を提供している。

  • 「マスプロダクションサポートサービス」を提供開始

    「マスプロダクションサポートサービス」を提供開始

3Dプリントサービスには、オプションとして、3Dデータを作ることができないユーザーに代わってデータを作成する「3Dデータ製作代行サービス」や、原型をもとに3Dデータを作製する「3Dスキャンサービス」、素材や特殊な後加工などに関する質問など3Dプリントに関する様々なアドバイスを行う「3Dプリントコンシェルジュサービス」、そして今回提供を開始する「マスプロダクションサポートサービス」など、利用条件に応じたさまざまなニーズに対応している。

次に川岸氏は、3社がタッグを組むことになった経緯を説明した。5〜6年前に起こった3Dプリントのブームを超え、産業利用が可能な状況が近づいてきたものの、日本では具体的なソリューションやアプリケーションが乏しく、海外と比べて遅れをとっている。こうした状況で国内に競合を置くことは無意味であり、競合によってお互いの発展を阻害するのではなく、エンドユーザーの利便性を高める新たなプラットフォームを3社が共同で作っていくことを選択したという。

3Dプリンタ技術は切削や射出成形といった既存の工法と比べると管理は容易になってはいるものの、設備投資費や場所の確保、技術習得、後加工技術などをすべて単独で対応することは困難だが、これらの課題を解決することをテーマに「マスプロダクションサポート」が生まれたということだ。

  • 「マスプロダクションサポート」には、性能確認・検証、3Dプリントサービスとしての利用、装置購入希望者へのフォロー、購入後のバックアップが含まれる

    「マスプロダクションサポート」には、性能確認・検証、3Dプリントサービスとしての利用、装置購入希望者へのフォロー、購入後のバックアップが含まれる

「マスプロダクションサポート」では、性能確認・検証、3Dプリントサービスとしての利用、装置の購入希望者へのフォローアップ、購入後のバックアップ——という4つのセグメントで構成される。装置を導入せずに継続利用も可能だが、装置の購入希望者にはユーザーの同意の上で3社でナレッジ共有を行い、リスクを大幅に低減させた形での装置導入が可能となっている。今後は、メッキや研磨等の後加工をサービスとして追加していく予定だという。加えて、装置メーカーや後加工メーカーなど同取り組みに参画する企業を随時募集していくということだ。

日本HP 3Dプリンティングビジネス部 部長・秋山仁氏

日本HP 3Dプリンティングビジネス部 部長・秋山仁氏

次に、日本HP 3Dプリンティングビジネス部 部長の秋山仁氏が登壇し、DMM.make 3D PRINTが採用するHP初の3Dプリンタ「HP Multi Jet Fusion」の海外での事例や、日本国内での活用法についての提案を紹介した。同プリンタの特長として、同クラスの従来3Dプリンタと比べて約10倍の造形スピードと高いパーツ品質、そして約50%のパーツコスト、造形材料のオープンプラットフォーム(社外品材料の認証)を挙げ、従来の3Dプリンタではなかなか実現できなかった最終製品への活用を推進していきたいという思いを語った。例として、HP Jet Fusionプリンタ本体に使われているプラスチックパーツの約50%が同プリンタで造形し、そのまま組み込んでいる点を挙げた。

  • 3Dプリンタ「HP Multi Jet Fusion」の特長

    3Dプリンタ「HP Multi Jet Fusion」の特長

また、海外のユーザーは「ハイブリッドなものづくり」がものづくりのトレンドであると紹介した。3Dプリンタと金型等を使った従来工法を対立させるのではなく、両方を組み合わせることが重要だと述べた。その例として、英国の自動車メーカーMINIが自動車に使われるドレスアップパーツを3Dプリンタで"世界にひとつだけのMINI"として提供するカスタマイズサービス「MINI Yours Customized」を紹介した。同サービスで使われるパーツは造形こそ3Dプリンタによるものだが、塗装は従来からの技術が採用されており、3Dプリンティングならではのデザイン性とカスタマイズ性を組み合わせて、新たな付加価値を生んでいるということだ。

  • 「ハイブリッドなものづくり」は従来工法×3Dプリンティングの融合

    「ハイブリッドなものづくり」は従来工法×3Dプリンティングの融合

また、スペイン・バルセロナの「LookReal」が提供する、顔写真からオリジナルのフィギュアを製作するサービスでは、顔の部分をHP Jet Fusionで製作していることを明かした。同サービスにおいても塗装や細部は職人の手作業によるもの、胴体部分も金型で作られており、3Dプリンティングと従来工法とが融合していることをアピールした。

さらに、宇宙空間(無重力環境)においても安定して給紙が行えるように開発された「HP ENVY Zero-Gravity Printer」では、用紙を送り出すパーツだけをHP Jet Fusionで造形しているという。これにより、プリンタ本体が180度逆さまになったり90度傾いたりしても、安定して給紙できるということだ。

  • 「テストマーケティングでの活用」を提案

    「テストマーケティングでの活用」を提案

最後に秋山氏は、日本国内のユーザーへ「テストマーケティングでの活用」を提案した。これは、Web製作などで2パターンのどちらが高いCTR、CVRを得られるかを検証する「A/Bテスト」の手法を、そのままものづくりにも採用してみては?というものだ。ふたつのプロトタイプのどちらが優れているかを見極めるために、3Dプリンタで少量を製作したのち、実際に試用したユーザーからフィードバックをもとに最終的なデザインを決めようというアイデアだ。しかし、3Dプリンティングは設計方法や品質保証、マネジメント等、独自のノウハウが必要であることが大きなハードルとなっている。そこで、サービスのプロバイダであるDMM.make、販売代理店であるリコージャパン、メーカーである日本HPが3社でタッグを組み、ノウハウを提供して障壁を下げることで、これまで提案した3Dプリンティングの活用を推進していきたいという考えを述べた。