立教大学は1月17日、同大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発し、金星探査機「あかつき」に搭載された中間赤外カメラ(LIR)を活用することで、金星の雲頂に南北約10000kmにわたって弓状の模様が出現することを発見し、その発生理由を解明したと発表した。

同成果は、同大理学部の福原哲哉 助教、田口真 教授らによるもの。詳細は英国科学誌「Nature Geoscience」(オンライン版)に掲載された。

今回発見された弓状の模様は、4日間の観測の間、大気中で常に吹いている東風(スーパーローテーション)の影響を受けずに、ほぼ同じ場所にとどまっていることが確認されたという。そこで研究グループでは、地形と弓状構造の位置を比較、その結果、弓状模様の中心部分の直下には標高約5kmに達するアフロディーテ大陸が位置していること、ならびにシミュレーション結果から、高度10kmの下層大気に局所的な気圧変化を与えると、重力波となって上空に伝搬し、高度65kmに達すると弓なりの形に広がることが分かったという。

なお、この弓状模様は、やがて観測されなくなり、別の時期に別の場所で不明瞭ながら同様の構造を観測したとのことで、弓状模様の出現には何らかの条件が必要であることも確認。今後、その生成メカニズムを解明していくためには、発生条件の絞り込みを行っていく必要があるとのことで、研究チームでは、観測の強化を進めていくとともに、データの解析と詳細なシミュレーションを進めることで、波の源である下層大気の気象の解明を進めていきたいとしている。

あかつきが撮影した金星の画像 (出所:立教大学Webサイト)

弓状模様の下にはアフロディーテ大陸と呼ばれる高地が存在。シミュレーションから、金星大気の下層に大気の乱れが生じると、発生した波が上空に伝搬し、高度65kmで弓なりの形に広がることが分かった (出所:立教大学Webサイト)