――先ほど自分でもデータを作ることがあると仰っていましたが、何を作られたのですか?

秋吉さん:洗面台の排水栓が壊れて下がりっぱなしになってしまったので、栓を上げて水が流れるようにするためのスペーサーを作りました。これが一番役に立ったと思います。修理を呼ぼうかと思ったのですが、直すのに2万円ほどかかるらしくて。

排水口のスペーサー

――2万円!?

秋吉さん:それならせっかくだから自作しようと考えて、3DプリンタとCADで作りました。他には3Dプリンタの後ろにフィラメントを引っ掛けておけるパーツも自作しました。既成品もあるのですが、サイズが合わなかったので、これも自分でCADを使って作りました。

――CADも使えるのですね!

秋吉さん:今回、デアゴスティーニで「週刊マイ3Dプリンター」シリーズを定期購読したのは、CADの勉強ができるというのも理由の一つだったんですよ。

フィラメント用のフックも、ちょうどいいサイズがなかったので自作したという

――そうだ、それを伺いにきたのでした。完成した3Dプリンタを有意義に活用されているのは十分に伝わりましたが、そもそもなぜデアゴスティーニのこのシリーズを定期購読しようと思ったのですか?

秋吉さん:もともと3Dプリンタに興味はあったんです。一時期流行ったときに家電量販店なんかで見たことはあったのですが、そのときは興味が持てず、ブームが去ってから興味を抱いたんです。そんなとき、テレビを見ていたらデアゴスティーニのCMが流れてきて……。

――でも、デアゴスティーニだと完成するのが一年後ですよね。すぐほしかったなら、既成品を何とかして探した方が早いと思うのですが。

秋吉さん:3Dプリンタで何かを作りたいという気持ちと同時に、3Dプリンタ自体の仕組みを理解したいという思いもあったんですよ。もともと学生時代に機械工学を多少やっていたこともあって、そういうものに興味があったんですね。既成品を買っても仕組みがわかりませんが、デアゴスティーニなら部品を一つ一つ自分で組み上げていくわけですから、3Dプリンタの構造を理解することができると思ったのです。

――なるほど。それなら納得です。ちなみに作るのは難しかったですか?

秋吉さん:号によって難しさはまちまちでしたが、ハンダ付けなどはしなくていいですし、一般的なドライバーとレンチがあればいいのでそれほど難しくはなかったです。

――実際、作ってみていかがでしたか?

秋吉さん:思った通り、3Dプリンタの構造を深く理解できてよかったですね。スケルトンなので中の機構が見えるのも私好みです(笑)。それに自分で作り上げたものだから、こうしてずっと使っているのかなとも思います。もしこれが既成品を買っただけだと、何か適当なものを一つ二つ作って飽きてしまっていたかもしれません。

――たしかに自分で作ったものだと愛着もわきますよね。

秋吉さん:それから、仕組みがわかると、自分でカスタマイズすることもできるんですよ。先ほどのフィラメントを引っ掛けるパーツもそうですが、このディスプレイも後から自分で取り付けたものなんです。idbox!のマイコンは汎用的なものが使われているので、そのマイコン用のディスプレイを取り付け、Wi-Fiで3Dデータを転送できるようにしてみました。

後付のディスプレイ

――このディスプレイは何のために取り付けたんですか?

秋吉さん:3Dプリンタをスタンドアローンで動かすためです。これを取り付けると、3DプリンタとPCをつながなくても動かせるんです。何しろ3Dプリンタで何か一つ物を作るのにはけっこう長い時間がかかりますから、PCをその間ずっと専有されるのは辛いので。

――それにしてもカスタマイズまでするのはすごいですね。

秋吉さん:いえいえ、上級者はもっとすごいですよ。デアゴスティーニのサイトやFacebookなどに、idbox!のユーザー同士で交流するコミュニティページがあるのですが、それを見ていると3Dプリンタのパーツを作っている人が多いんです。

――3Dプリンタのパーツを3Dプリンタで作るって何か不思議な感じですけど、考えてみれば3Dプリンタを作るために定期購読した方々ですもんね。ご自身でも投稿をされるんですか?

秋吉さん:そうですね。作品の写真を上げたりはしています。

――ちなみに他のユーザーの方はどんなカスタムを?

秋吉さん:デュアルヘッドにしたりされる方もいますね。デアゴスティーニの定期購読だとデュアルヘッドにはならないのですが、要は部品がもう一つあればいいので、定期購読とは別に、必要なパーツが付録でついてくる号だけ買った方もいるようです。

――3Dプリンタの仕組みを理解していないとそういうカスタムは難しいでしょうね。

秋吉さん:私も次はデュアルヘッドにしたいですね。アンケートでも希望しておきました。

デュアルヘッドにすると時間短縮だけでなく、フィラメントも2色使える

――ところで、3Dプリンタを手に入れたことで、思考が「買う」から「作る」方に変わったりしましたか?

秋吉さん:しましたしました! 買うよりも先に、「作れないかな」と考えるようになりましたね。その結果が先ほどの排水口のスペーサーです(笑)。

――2万円ですもんね。すぐ元が取れそう。

秋吉さん:新しい世界が見えた感じですね。こんな世界があったのか! と。

――今後作りたいものはありますか?

秋吉さん:うーん……やっぱり実用的なものですね。3Dプリンタ自体も改良していきたいです。

――ありがとうございました!

なぜ既製品を買わずにデアゴスティーニで定期購読するのか。そこには「仕組みを学べる」「愛着が沸くので長く使える」といった納得の理由が隠れていた。ちなみに、「週刊マイ3Dプリンター」シリーズは好評につき、延長版として「プリント実践編」の発行が予定されているほか、フィラメントなど関連商品を集めたWebストア「3DPrinter Market」もオープンしている。