そして年1回の更新作業の際に、すべての同じポイントで撮影された景観画像同士が並べられて変更点の有無がチェックされる。さすがに毎年毎年全CGを作り直していたら大変なので、新しい建築物であるとか、ビルの屋上などにある大型看板の内容だとか、建物自体は変わっていないが修繕作業で再塗装されて色が変わっている場合など、見た目的に変化がある箇所だけ洗い出して修正作業が実施される(画像17)。

ちなみにタイガー・アイが撮影するポイントは、画像17の大通り上に並んでいる黄色い小さな四角だ。その1点ごとに、最新の景観画像と1年前の画像の比較が同じく画像17の左上のように並べられて行われ、違いを確認するのである。

看板などは1年どころかもっと速いペースで変わっていくはずなので、白くしておいた方がいいのではないかと思われるのだが、直す直さないの判断を行っていると非常に時間もかかるし間違いも出てきて大変なため、「景観画像に写っているものは基本的にはすべて作る」のだそうだ。

画像17。タイガー・アイの撮影ポイントと、最新および1年前の画像比較を行う画面

あと、看板などは当然企業の商品であるとかアーティストのニューアルバムのジャケットであるとか、コピーライトのあるものが大多数のはずで、それを地図画像で使ってしまって問題ないのか、すべて許可を取っているのかというところを疑問に思う方もいることだろう。

実は、全部OKなのだ。なぜかというと、地図は公共利用されるものであり、そしてその地図で使うのに一般道から撮影できる景観に関しては利用していいのだそうだ。ただし自衛隊の施設(いわゆる国防上の問題に関係する軍事的施設)や、完全に「撮影禁止」となっているものはもちろんダメである。もちろん撮影禁止とあっても、本来は一般道から見える部分に関しては問題がないそうだが、同社では所有者・管理者の意向を汲んで反映していないそうだ。

それから、撮影された景観画像を1点1点ピックアップして去年の画像も読み込んで……などとやっているととても時間が足りないので、作業の大部分は自動化されている。タイガー・アイ自体がまず決められたポイントで毎年撮影し、データ収集後にHDDを取り外してそれをそのまま自動処理で昨年と同じ画像と比較できるようにするという仕組みだ。

こうして表通りの詳細な3D地図が作られた後は、その作成された3DCGと景観画像を同じポイント上で重ね合わせて、人の目でチェックが行われる。画像18と19を見てもらえばわかるように、当たり前といえば当たり前かも知れないが、CGと景観画像がほぼ重なる形の精密さで作られている。ただし、CGの方は視認性を上げるためにCGらしいコントラストになっているのと、若干ビルの描かれ方がパースが利いているといった差違はある。

ちなみにこうしたCG作成ツールは独自のソフトが使われているが、直感的な操作を行えるようになっているので、オペレーターはCG製作自体の専門的な知識は持っていないという。

画像18(左):完成したCG。視認性のためと思われるが、コントラストがくっきりしたCGらしいCGになっているのと、道の両側のビルがかなり前のめりになっていて(道路側に倒れるような感じ)、パースが利いている。画像19(右):実際にタイガー・アイで撮影されたCG制作のための参考画像。ビルがもっとまっすぐに立っている