御存知ない方の方が多数派かも知れないが、ヤマハの旧社名は「日本楽器製造株式会社」だ。ちなみに「にほんがっき」ではなく「にっぽんがっき」で、NECが「日本電気(にっぽんでんき)」なのと似ている。

IT分野の歴史は意外と長い

「楽器メーカー」だったはずのヤマハだが、実は楽器以外の分野でも古くから多様な事業展開を行っており、IT分野との関わりも意外なほど古い。筆者が高校生の頃に、6502互換CPU(YM-2002)を使った8ビットPC「YIS」を売り出したこともあるぐらいだ(ちなみに、これのカタログはまだ手元にある)。

*システムコンピュータYIS(ワイズ)は、1981年12月に発表され、最初のモデルが1982年2月に発売された。

元をたどると、電子楽器を手掛けるようになったことが、自ら半導体事業に乗り出す端緒になったと記憶している。その半導体関連事業から、ISDN関連製品に道がつながったわけだ。うろ覚えだが、ISDN回線経由でファイルの転送だったかディスクのコピーだったかを行う製品がなかっただろうか。

*1990年9月に「FDわーぷ」という愛称でフロッピーディスクファクシミリ「FDX1」が発売された。

これに限らず、「ある分野に進出した後で、そこで得られたノウハウを駆使して関連分野に製品・事業を展開していく」のはヤマハの得意パターンで、「ピアノの製作に木工技術が必要→家具や自動車内装部品の製作」あるいは「アーチェリー用品の製作→FRP製品の製作技術をキーにしてスキー板やゴルフ用品などに展開」といった事例もある。

だから、半導体からISDN関連製品を経て、LAN同士を結ぶネットワーク製品に話がつながっても、実は不思議でも何でもないのである(でも、楽器メーカーがネットワーク機器を出すのは、やっぱり不思議だと思う(編集部))。