金融不況だけでなく、燃油サーチャージや新型インフルエンザなど、さまざまな外部要因リスクにさらされ続けている旅行業界。さらなる追い打ちをかけるかのように、この4月、日系航空会社がゼロコミッション化に踏み切った。これまで航空会社から旅行会社にコミッションとして支払われてきた手数料がゼロになったのだ。ゼロコミッション化は世界の航空会社の大半がすでに実施しており、日系航空会社もこの流れに乗じた形となる。

H.I.S. 関東法人団体専門店事業部 業務グループ グループリーダー 嶋村一穂氏

加えて、不況のあおりから企業の出張費 - とくに海外業務渡航費が大幅に削減される傾向にあり、旅行会社各社は新たなサービスを提供する必要に迫られている。そんな中、個人向けの格安航空券販売で会社を成長させてきたエイチ・アイ・エスが、同社の業務渡航部門における新サービスの準備を始めているという。業務渡航に関しては、どちらかというと後発に近い同社だが、「顧客のニーズにあった商品を提案させていただくことには自信がある。旅行会社は新たなビジネスモデルへのチェンジを図っていかなければ、生き残っていくことはできない」(H.I.S. 関東法人団体専門店事業部 業務グループ グループリーダー 嶋村一穂氏)と、業務渡航マーケットにおけるシェア拡大に意欲を見せる。

その新サービスとは、企業に出張の一元管理を提供するITソリューションだ。部門単位、あるいは個人単位で行われがちな出張予約や、出張申請、経費精算などにまつわる管理業務を一元化、もちろんセキュリティやコンプライアンス遵守も担保するというシステムである。企業ごとの出張規程や運用ルールにあわせてカスタマイズされたものであれば、間接部門費用の削減にもつながる。H.I.S.ではすでにこの春から導入を開始、現在は数十社においてテスト運用中で「秋ぐらいには正式にサービスインしたい」(嶋村氏)としている。そして、ここで使われているサービスの基盤となっているテクノロジがアマデウス・ジャパンが提供する「Amadeus e-Travel Management」だ。

「Amadeus e-Travel Management」でのフライト予約画面。スケジュール、料金、座席クラスのほか、企業ごとの出張規定に応じたフライトをWebベースで選択可能

アマデウス・ジャパンは旅行/航空業界向けにITソリューションを提供するプロバイダの1社。1987年にエールフランス航空、ルフトハンザドイツ航空、スカンジナビア航空、イベリア航空の4社による共同出資で設立されたAmadeusの日本法人である(本社はスペイン・マドリッド)。提供するソリューションは「予約システム&コンテンツ」「セールス&eコマース」「業務管理」「サービス&コンサルティング」の4つをベースとしている。

アマデウス・ジャパン トラベルITサービス部 ダイレクター 小倉康之氏

Amadeusのような旅行業界に特化したプロバイダが提供するITシステムはGDS(Global Distribution System)と呼ばれる。航空会社のWebサイトが行う航空券予約システムなどがわかりやすい例だろう。現在、GDSは単なる予約システムとしてだけでなく、ホテルやレンタカーの予約/手配、決済システム、顧客情報の管理など、旅行に関するあらゆるコンテンツを、エンドユーザが満足するスピードと使いやすいインタフェースでもって提供することが求められている。Amadeusは「オープン/標準とされている技術を積極的に使い、レガシーと新システムの統廃合を求められることが多い航空会社のIT化を促進してきた」(アマデウス・ジャパン トラベルITサービス部 ダイレクター 小倉康之氏) という実績をもつ。現在、スターアライアンスグループをはじめとする150を超える航空会社にサービスを提供、76カ国/217を超えるマーケットで事業を展開している。