H.I.S.はAmadeus e-Travel Managementが業務渡航手配のフローを大きく変える可能性をもつシステムとして採用に踏み切った。「予約/手配と承認のフローを同時に管理できるなど、コスト削減やタイムセービングを含め、出張管理を一元化することで企業が得られるメリットは大きい」と嶋村氏は語る。新型インフルエンザやテロなど想定外のリスクに社員が晒された場合も、Web上で所在確認が容易に行えるなど、危機管理対策が十分に考慮されている点もポイントが高い。

現状の業務渡航手配フローは個人ベース/メールor電話ベースのため、時間のムダが多く、また、管理者は個々の出張者が現在どのステータスにあるのかを把握しにくい

Amadeus e-Travel Managementがうまく稼働すれば、24時間365日アクセスすることができ、時間のムダが大幅に削減できる。また管理者はすべての出張者のステータスをいつでも把握することができる

さらにカスタマイズ性の高さが、顧客企業の出張規定に合わせたシステム構築を可能にする。役職に応じた座席の指定、出張規定に則した航空会社/ホテルのみを表示、などが自在に行える。設定変更もリアルタイムで可能だ。また、ERPなど顧客企業の既存のIT環境との統合も可能だという。

もうひとつ、採用の決め手となったポイントとして、H.I.S.自身が現在、積極的なグローバル展開を行っていることが挙げられる。「6月1日現在、直営の海外支店は73都市95拠点。これをさらに拡大し、世界ブランド"H.I.S."として確立することをめざす」(嶋村氏)という同社だが、そのネットワークをもって海外に支社/支店をもつ日本企業を現地で積極的にサポートし、業務渡航マーケットでのシェア拡大を図りたいとしている。「海外支社をもつ企業から、"支社からの出張申請も日本の本社で共有/管理したい"という要望が非常に多かった」(嶋村氏)というが、同社の戦略と顧客の希望にマッチしたソリューションだったといえる。

「業務渡航マーケットは、単に価格が安ければいいというものではなく、さまざまな付加価値を求められる」と嶋村氏は語る。H.I.S.にはどうしても"格安航空券"というイメージがついて回るが、こと、法人向けのサービス提供となれば、そのイメージからの脱却を図ることが必要になる。「旅行会社は手数料ビジネスから大きく転換することを迫られている。ITを駆使した新たなサービスの提供、それをいち早く提供すること - これこそが生き残りのカギとなる」と嶋村氏。不況は顧客の要求をより厳しいものにする。トラベルITの世界もまた同じだ。多様化する顧客のニーズにH.I.S.はどう対応していくのか、そしてアマデウスの技術力がどこまでその要望に応えられるのか、非常に興味深い事例である。