CS4は玄人受けする機能強化がなされた印象

東 弘明
芸術系短大にて独学で2Dとモーショングラフィックスを学ぶ。卒業制作作品が「キヤノン・デジタル・クリエーターズ・コンテスト」にて入賞。その後、3DCGを勉強するため渡米。サンタモニカで約1年留学生活を送り、3DCGソフトの「Maya」を習得。帰国後、コナミでチーフデザイナーとして2Dのインタフェースデザインに携わる。その後フリーランスとなりCMやPVのCGディレクションを経て現在は映像ディレクターとして活躍。PE’Zの「NA!NA!NA!」、Crystal Kay「Shining」、元ちとせ「蛍星」、伊藤園ビタミンフルーツCM「クリスタル編」などを手がける

「Adobe Creative Suite 4」製品群が発売され、様々なクリエイターが作品創りにCS4を利用している。その中でも、映像の合成・エフェクトツールである『After Effects CS4』は映像クリエイターたちに重宝されている。今回、すでにAfter Effects CS4を使い商業作品を創っている映像作家・東 弘明に話を訊いた。映像の世界でディレクターとして活躍する東は、After Effects CS4をどう自身の作品制作に活用しているのだろうか? また、東はどのようにしてクリエイターとなったのだろうか?

――東さんは、すでに制作環境を「After Effects CS4」に移行されたそうですが、After Effects CS4にどのような印象を持たれていますか?

東 弘明(以下、東)「CS4にバージョンアップしてから、『Photshop』を介して3Dオブジェクトを取り込めるようになりました。だから、これまで2Dモーショングラフィックスしか制作できなかった人でも、これまでと同じようなオペレーションで3DCGも作れてしまう。この機能がついたことで、多くのクリエイターがプラスの面を享受できるのではないかと思います。今回のアップデートでは、そういったプラス面を強く感じます。また、インタフェース自体がスッキリと整理されているという印象があります。例えばタブが出てくるというように、全体的に洗練された印象を受けました。何かが部分的に際立つようなアップデートではないのですが、全体として玄人受けする機能が増えましたね。自分が探したいモノをすぐに見つけ出せるクイックサーチや、コンポジションが階層で重なっているときにトップに戻れる機能などは、今思うと最初からあるべき機能だと思うんです。だから、まるで初めからあったように、すんなりと使用できました」

――CS4を使うことによって、作業の効率化を実感できる部分はありますか?

東「実感しますね。今はCS4とCS3の両方をパソコンに入れて作業しているのですが、CS3にしか対応していないプラグインが多くあるんです。だからCS3で作業しているのですが、やっぱりコンポナビとかクイックサーチというCS4の機能を探してしまうんです。要するに、CS4の機能があるのとないのとでは、全く効率が変わってくるということなんです」

――CS3からCS4への完全移行についてはどうお考えでしょうか。

東「まだ完全移行はしていません。CS4以前から進行していたプロジェクトの作業は、CS3で制作しているものも多く、たとえばCS4で慣れたとしても、CS3に戻って操作をするとなるととても不便なんですよね。だから、近いうちにCS4に完全移行はしたいですね」

――東さんは何年前からアドビ製品を使っているのですか?

東「かれこれ10年くらいですね」

――ツールのバージョンアップは、こまめに行うタイプなのでしょうか?

東「やはり、リリースがあるたびにアップデートしています。最も時間がかかるレンダリング、RAMプレビューができる長さ、トラッキングの精度、などといった基本的な機能は、バージョンアップをするたびに少しずつクオリティが上がっていますからね。この仕事を進める上で最も必要なのは作業時間なんです。だからバージョンアップすることでレンダリング時間が短縮されたり、RAMプレビューが長く確認できると、余計な時間が少なくて済む。そうすることで、よりクリエイティブな仕事に時間を割くことができます。ワークフローをそのように構築していくためにも、バージョンアップは絶対に必要ですね」

――とはいえ、現状ではまだCS4に移行していないクリエイターも多いと思うのですが。

東「そうですね、外から見るとマイナーアップデートという印象もありますが、コンポナビやクイックサーチの良さって、使っている人ほど実感できると思うんです。本当に、痒いところに手が届く感じですね。他にも、『moca』というトラッカーもかなり面白いんです。元々サードパーティ製なんですけど、ハンディカメラで撮った素材の中に映っている看板に、自分で作成したグラフィックをはめ込むことが出来るんです。今までは点と点という考え方だったんですけど、点ではなく面で追いかけられるんですね。トラッカーツールなどは、よりコンポジットツールとして成熟してきている印象を受けますね」

東 弘明がゲーム業界から映像ディレクターに転身したいきさつとは?